【NPR要約】「AIに仕事を奪われる」は勘違い? アメリカの新卒が就職難に陥った“意外すぎる真犯人”|英文ビジネスニュース日本語解説
この記事の論点:
アメリカの新卒・若者が直面する深刻な就職難。その真犯人は「AI」ではなく、皮肉にも働き方改革の象徴である「リモートワーク」だった。
—「画面越し」の環境がもたらす育成コストの増大と、企業が「即戦力」へ傾倒していく構造を整理。
“AI isn't disrupting so many jobs for recent college grads — yet.”
「AIは若者の雇用をまだ奪っていない。今のところは。」
「最近のAI進化のせいで、大卒の就職マーケットが荒らされている」――今、アメリカの大学生の間ではそんな噂が真しやかに囁かれている。
しかし、ニューヨーク連邦準備銀行(NYFed)が発表した最新の研究データは、まったく異なる“不都合な真実”を弾き出した。
若者から仕事を奪っていたのは、AI(人工知能)ではなかったのだ。
その真犯人は、日本でもすっかり定着した「リモートワーク(在宅勤務)」だった。
一見、若者にとって自由で働きやすそうなリモートワークが、なぜ彼らの首を絞めているのか? その衝撃の実態について、今回紹介する記事は伝えている。
ぜひ全文を読んで欲しい。
|「売り手市場」の日本とは大違い。アメリカの若者を襲う“20%の断絶”
The researchers found the unemployment rate among younger college grads — those under the age of 29 — rose 20% after the pandemic, while unemployment among older college grads fell slightly.
「新卒は空前の売り手市場」と沸く日本とは対照的に、現在のアメリカでは若者の就職市場が冷え込んでいます。
この研究を行なったNYFed(ニューヨーク連銀)は、過去にも「トランプ関税の9割はアメリカ人が払っている」といった尖った内容のレポートを出した実績がある。
今回のリサーチによると、パンデミック以降、29歳以下の若い大卒者の失業率はなんと20%も上昇しているのだ。
一方で、経験のあるシニア層(older college grads)の失業率はわずかに低下。完全に明暗が分かれている。
なぜ、これほどまでに若者だけがハジき出されているのか? 調査を進めると、「社会がリモートワークを志向するほど、若者が労働市場から消えていく」という奇妙な因果関係が浮かび上がってきた。
|「どこでも働ける仕事」ほど、若者が真っ先にクビを切られる現実
They found the gap in unemployment between recent graduates and older workers was significantly higher in "remotable" jobs than in jobs that have to be done in person.
The unemployment rate for younger grads in "remotable" jobs jumped by almost a full percentage point after the pandemic, while the unemployment rate among older grads fell marginally.
調査チームは、すべての職種を「リモート可能(remotable)な仕事(IT・ソフトウェア関係など)」と「対面必須(non-remotable)の仕事(機械工学などの現場職)」の2つに分類して分析を行った。
その結果は顕著だ。対面必須の仕事に比べ、リモート可能な職種において、新卒者とシニア労働者の「失業率の格張」が圧倒的に広がっていたのだ。
「リモート可能」な職種では、パンデミック前後での若い大卒者の失業率はほぼ1%ポイント急上昇。対照的に、シニア層の失業率はわずかに低下した。
つまり、リモートワークができる環境では、企業は古参のベテランを残し、実績のない新卒を容赦なく切り捨てているということだ。データによれば、若い大卒者の失業率上昇の約3分の2は、リモートワークが原因だと説明がつくという。
|「画面越し」では育たない? 企業が新卒採用をコッソリやめた理由
"What we saw was this pretty striking pattern that software engineers got about 20% more feedback if they were sitting near their colleagues than if they were distant from them," she says, adding that that was true even before the pandemic.
The researchers then looked deeper into who was getting hired at the tech firm. Turns out, as the company embraced remote work, they switched away from hiring younger people.
では、なぜリモートワークはこれほど若手に不利に働くのか?
NYFedがある企業を対象に行った調査で、決定的なメカニズムが判明した。ソフトウェアエンジニアの働き方を調べたところ、「同僚の近くに座って仕事をしているメンバーは、離れて働くメンバーよりも約20%多くフィードバック(指導や助言)を受けていた(got about 20% more feedback)」のだ。これはパンデミック前から一貫して見られた傾向だ。
言うまでもなく、上司からのフィードバック(適切な指導)を最も必要としているのは、右も左もわからない新入社員だ。しかし、画面の向こうにいる部下を育てるのは、物理的に目の前にいるより遥かにコストがかかる。
その結果、この会社が出した結論は残酷なものだった。リモートワークを導入すると同時に、若い人材の採用を段階的に控える(=経験者の中途採用に切り替える)ようになったのです。
勘違いしてはならないのは、「若者がリモートワークを望んだから落とされた」わけではないという点だ。会社や社会全体がリモートに傾けば傾くほど、企業は「手がかかる新卒」を避け、「即戦力のベテラン」でポストを埋めるようになる。
ちなみに、この調査対象となった企業は、その後に「出社回帰(オフィス勤務)」へ方針転換したところ、新卒の採用を再開したらしい。
|「出社回帰」は、日本の“就職氷河期”の悲劇を防ぐ特効薬になるか
"Early-career experiences can have lasting consequences," the researchers write.
"Research finds that individuals who began looking for jobs in slacker labor markets tend to have lower earnings and slower career progression relative to comparable peers who began their job search in better market conditions."
「キャリア初期のつまずきは、人生に長期的な影を落とす(have lasting consequences)」と研究者は警告する。
原因が何であれ、若い大卒者の失業率の高止まりは懸念すべき事態だ。
労働市場が冷え込んでいる時期(slacker labor markets)に不本意な形で求職活動をスタートせざるを得なかった世代は、好景気に就職した世代に比べて、生涯賃金が低くなり、キャリアの出世スピードも遅くなる(slower career progression)傾向があることが過去のデータから分かっている。これは、日本の「就職氷河期世代」が直面した苦難とも見事に重なる。
そう考えると、今回の「リモートワークが若者の失業の元凶だった」という発見は、むしろ社会にとって希望 of 膨らむ光かもしれない。
なぜなら、「AIの進化」や「自己責任」といった個人の力ではどうしようもない問題とは違い、「出社回帰」は企業が経営判断一つで今すぐ変えられる現実的な解決策だからだ。
オフィスに集まって働くという当たり前の選択が、巡り巡って、将来の「あきらめ世代」や「寝そべり族」を生み出すのを防ぐ。若者の未来を守る鍵は、最先端のテクノロジーではなく、案外「対面のコミュニケーション」にあるのかもしれない。
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