【FT要約】1兆ドル消失したスペースXのIPOが引き起こした「祭りのあと」— 踊らされた個人投資家たち|英文ビジネスニュース日本語解説




この記事の論点:

史上最大のIPOとなったSpaceX株の急落劇と、その裏にある市場の狂騒。

— 個人投資家を巻き込んだ「FOMO相場」の罠と、ウォール街の投資銀行が莫大な手数料を得る構造について解説。

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「祭りのあと」の必然:史上最大IPOの光と影

Shares in Space hit an intraday peak of $225 in mid-June, pushing the market value of Musk's lossmaking company above Amazon's in the days after it raised $86bn at a valuation above $2tn in the world's biggest-ever IPO.

「Space株は6月中旬に取引時間中の最高値225ドルを記録し、赤字経営であるこの企業(lossmaking company)の時価総額はアマゾン社を上回る場面もあった」

今回紹介する記事は、半ば皮肉を込めてこう伝えている。

史上最大規模のIPO(新規株式公開)となった6月のスペースX社の上場。しかし、「祭りのあと」の状況は、大方が予想する結果となった。

そう、「超話題の企業のIPOは上場直後の急騰の後、程なく公募価格を大きく割り込む」という『法則』がやはり発動したのだ。IPO前にこのリスクを強調していた識者がどれほどいただろうか。

経済の歴史が繰り返した今回の急落劇について、ぜひ全文を読んでみてほしい。

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イーロン・マスクの「1兆ドル」が吹き飛ぶ

Space yesterday dropped below its listing price of $135 per share, extending a slide that has erased more than $1tn from the value of Elon Musk's conglomerate since the peak shortly after its record IPO.

スペースX社の株価は16日、公開価格(listing price)の1株あたり135ドルを割り込んだ。

時価総額(=株価×発行株式数)の変動で見ると、記録的なIPO直後のピーク時から、わずか1ヶ月ほどで1兆ドル以上が吹き飛んだことになる。

IPO直後には人類史上初の「トリリオネア(総資産1兆ドル以上の大富豪)」となったマスク氏は、この下落でその地位から瞬く間に転落した。40%も急落した株価に伴い、マスク氏が保有する42%の株式の価値は1.2兆ドルから約7,600億ドルへと急減したのだ。

創業者がリスクを抱えるのは当然として、問題は、どれほどの人間が「道連れ」になっているかだ。それを理解するには、今回のIPOの特異さに注目する必要がある。

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仕組まれた「FOMO相場」と個人投資家の狂騒

About 20 per cent of June's $75bn offering went to retail traders, an unusually high share for a large-cap offering.

6月に行われた750億ドルのスペースX株の売り出しのうち、約20%は個人投資家(retail traders)に割り当てられた。これは大型株の売り出しとしては、異例の高水準(unusually high)である。

通常の大型IPOでは、個人への割り当ては数%にとどまることが多い。ヘッジファンドに割り当てられたのが約10%に制限されたことと比べても、この20%というウェイトの特異さが分かる。この個人投資家への割当比率の高さこそが、市場に爆発的なお祭り騒ぎを引き起こした一因だと言える。

すなわち、個人投資家にありがちな「FOMO(Fear of Missing Out:取り残されることへの恐怖)相場」が、起こるべくして起こったのだ。

彼らの祭りの後は前述の通りだが、スペースXの株主でなくても影響が及んでいることには注意が必要だ。ナスダックはスペースXの上場を勝ち取るため、事前にルールを変更。通常は数ヶ月〜1年かかる指数への組み入れを、上場後わずか15営業日(7月7日)で採用する「ファストトラック(早期採用)」を適用した。

結果として、スペース株の急落はナスダック100指数を4~6%押し下げる要因となった。

米国の高金利への懸念や、ビッグテックによる巨額のAI投資の収益性をめぐる不安から、割高なハイテク株全体がこの1ヶ月間苦戦を強いられている中で、この強引な指数組み入れが追い打ちをかけた形だ。

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祭りの裏で「確実」に儲けていた黒幕たち

The more than 20 Wall Street banks that worked on the SpaceX deal shared a fee pool of half a billion dollars, by far the largest IPO windfall of all time.

他方で、そんな祭りの前にしっかり儲けていたのが投資銀行だ。スペースXの案件を手がけた20社以上のウォール街の投資銀行は、総額5億ドルにのぼる手数料プールを分け合った。これはIPOの報酬としては史上最大規模である。

今週あった米大手銀行の決算では、このIPO報酬に加え、AI関連銘柄を中心とした投機的な取引ブームの恩恵があったことを受け、四半期として過去最高の利益を計上する銀行が相次いだ。

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Several pre-IPO investors are sitting on billions of dollars in unrealised gains.

さらに忘れてはならないのが、IPO前から投資していた投資家だ。彼らは株価が下がった現在も、数十億ドル規模の含み益(unrealised gains)を抱えている。

もっとも、社内関係者(インサイダー)である彼らは現在、IPO後のロックアップ(売却制限)期間中のため株式の売却が制限されている。しかし、スペースXが8月に初の四半期決算を発表した後は株式を自由に売却できるようになり、悠々と「逃げ切り」ができる可能性は極めて高い。

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描かれた青写真の行方

Goldman Sachs, a bookrunner on Space's offering, expects the company's Al revenue to increase 100-fold by 2030. SpaceX three weeks ago raised about $25bn in debt. It has since been among the worst performers in the high-grade bond market.

スペースXの上場におけるブックランナー(引受幹事会社)を務めたゴールドマン・サックスは、「同社のAI関連収入が2030年までに100倍に増加する(increase 100-fold)」と予測した。手数料でしこたま儲けさせてくれた会社を悪く言うはずもないが、一体どこまで話を「盛って」いたのだろうか。

現実の市場はすでに冷ややかな視線を送っている。スペースXが3週間前に調達した約250億ドルの負債(社債)は、投資適格(ハイグレード)債券市場において、ここ最近で最もパフォーマンスの悪い銘柄の一つとなっているのだ。

この予測がただの誇大広告のままで終わるか、それともイーロン・マスクが再び奇跡を起こして実現させるのか。

その答えが出る頃には、ウォール街の主役たちはとっくに次の「お祭り」へと移動しているだろう。

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