物価高はいつ終わる?|CNN|サクッと読める英文ビジネスニュース

The solution to America’s affordability problem might be broken, too|CNN|2025.12.15


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The solution to America’s affordability problem might be broken, too
世界的な物価高問題。
アメリカでは「affordability(価格の手頃さ)」問題と言われている。

先週、FRB(連邦準備制度理事会)の利下げがあったが、それでも「この問題は解決しない」とするのが今回紹介するCNNの分析だ。

ぜひ全文を読んで欲しい。


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|アメリカでも「物価上昇を上回る賃上げを」

The best way to fix Americans’ cost-of-living problem is to give workers bigger raises, Federal Reserve Chair Jerome Powell said last week.
アメリカのFRBは先週、主要政策金利を3回連続で0.25ポイント引き下げた。

引下げ後の金利は3.5%~3.75%というレンジ(誘導目標)なのだが、これは3年ぶりの低水準となる。

今回の決定に関する報道で強調されていたのは、FOMC内でかつてないほど意見が分かれた点だ。

12人の金利設定委員のうち最終決定を支持したのは9人。それ以外の2人は金利据え置きを支持し、残りの一人(トランプ派の理事)は「倍」の0.5ポイントの利下げを要求した。

反対意見がこれほど出たのは2019年以来らしい。

意見が割れたのは、FRB的に「インフレ低下へのコミットメント」と「完全雇用の維持」という二つの公約のどちらを優先するかで意見が分かれたからだ。

今のアメリカでは、高インフレが根強く残る一方、米国労働市場は弱体化しつつあり、対処すべき課題が二つあるのだ。

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じゃぁどうすべきなかについてだが、パウエル議長は記者会見の中で「より大きな賃上げ(to give workers bigger raises)こそが生活費問題を解決する最良の方法」だとした。

要は、インフレにも耐え得る賃上げがあれ問題ない、ということだ。今回の決定は、「インフレ」より「雇用」を優先した、ということになる。

だとすれば、「affordability」の問題は解決に向かうだろうか?


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|「サイクル」頼み

The Fed hopes that by reducing interest rates, businesses will spend less to borrow money, freeing up more capital to spend on hiring.  
A better labor market would give Americans more choices in jobs, increasing the amount of pay companies would need to shell out to keep and attract workers.
端的に言うと、FRBは『金利を下げれば企業は給料を増やす』と期待している。

すなわち、FRBの希望シナリオでは、『金利引き下げ(reducing interest rates)→ 企業の借入コスト減(spend less to borrow money)→ 雇用に回せる資本を増やす(freeing up more capital to spend on hiring)』というわけだ。

このロジック、デフレ時の日本でも使われていた教科書的な処方案だが、「affordability(価格の手頃さ)」が流行語になるほど物価が高止まりしている今のアメリカは真逆の状況だ。


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If that keeps up, then over time, people will adjust to the higher prices, which will feel relatively affordable as their paychecks grow, Powell argued. 
Of course, that’s easier said than done.
もっとも、FRBが期待する「サイクル」が上手くいけば、人々の給与が増え、高い物価でも相対的に(relatively)「手頃(affordable)」に感じられるようになる、らしい。

今さらというか、これまでの日本以外の先進国がそうだった。

物価上昇率分を引いた実質賃金がプラスである限り、「affordable」さに違いはないといえるが、日本はずっとマイナスだったから生活苦なのだ。

ところがアメリカでも、筆者によれば「言うほど簡単ではない」そうだ。


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|「賃上げ」できる状況?

Job growth has come to a near standstill, with overall hiring falling in both June and August.  
The US economy has added an average of just 76,000 jobs per month in 2025, barely enough to support America’s population growth and less than half the average the US economy was adding in 2024.
アメリカの労働市場は明らかに減速している。

つい16日に11月のアメリカ雇用統計が公表されたが、前月比6万4000人増となった雇用者数は予想を超えたものの、4.6%の失業率は4年ぶりの高さだ。

この6.4万人は含まれない(含むともっと下がる)が、米国経済が追加した雇用は2025年の月平均で7万6千人だそうだ。

これは、人口増加を支えるにはギリギリ(barely enough to support America’s population growth)で、2024年の平均の半分以下まで落ちている(less than half the average the US economy was adding in 2024)とのことだ。

ちなみに日本国内の就業者数(2025年10月)は約6,865万人で、「前年同月比」で 52万人の増加だ。無理やり12で割ると4.3万人になる。

アメリカの人口が日本の2.8倍ということを考えると、確かに減速しているといえる。


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|現実的になろう

So, if the job market heats up again, paychecks may get a boost, too. 
But if inflation continues to rise, higher wages will get consumed by higher prices. 
The affordability problem won’t get solved that way.
もちろん、雇用市場が盛り上がれば、給与も上昇する可能性がある(paychecks may get a boost)。ただし忘れてはならないのは、インフレが再び上昇するかもしれないことだ。

その場合、「高い賃金」は単純に「高い物価」に食われてしまう(higher wages will get consumed by higher prices)。

「affordability」問題から見れば、賃金の方が物価を食うほど伸びないと解決にはならないのだ。


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The post-pandemic take-this-job-and-shove-it, quiet-quitting era where workers had the upper hand over employers is officially over.  
People with jobs are staying put, even if they’re unhappy.
労働者が雇用主に対して優位に立っていた(workers had the upper hand over employers)時代は完全に終わった。

仕事を持つ人々は、不満があっても職を離れない(staying put)。

退職代行とか呑気なビジネスが流行っている日本は「affordability」という意味ではまだ幸せなのかもしれない。

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