用意しすぎた日本。トランプ関税の前では結局同じ扱い|BBC|2025.07.12
Asia is reeling from Trump’s tariff salvo - is anyone winning?|BBC|2025.07.11
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「誠に遺憾(deeply regrettable)」
今週 25%と通知されたトランプ関税に対する石破総理のコメントだ。英語だと相手に失望したのか自身に向けたものなのか曖昧な表現だが、そこが外交的な修辞のポイントなのだろう。
他方で英字メディアは辛辣だ。7回にわたる担当大臣の訪問は「ほとんど成果がなかった(have borne little fruit)」とまで言われている。
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今回トランプ氏からの通告レターが送られたのは23カ国。そのうち14カ国はアジアの国だ。
もっとも、適用自体は8月初日からなので、通告を受けていない他の国はまだ交渉中とも言える。ところが、日本という同盟国がこれまで散々オープンな形で交渉をしていたにもかかわらず、それでも追加関税を免れることができなかったことが、これからの沙汰を待つ国に波紋を広げているとのことだ。
それでは今回の対米交渉において勝者はいるのだろうか? 7月 11日付のBBC記事「Asia is reeling from Trmp’s tariff salvo - is anyone winning?」は興味深い見解を伝えている。
ぜひ全文を読んで欲しい。
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|勝者と敗者:まだ諦めないものたち
Winner: Negotiators who want more time
今回の「勝者」はどの国か。「ある意味ほとんど全ての国が、8月までの数週間を交渉に使えるという意味で恩恵を受けている」…という、一見無理のある展開でこの記事は始まる。どういうことだろうか。そこには、「米中対立のとばっちり」という要素があるようだ。
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タイやマレーシアといった国は、高関税をかけられる中国製品が米国に輸出されるために迂回する場になり得る、とアメリカは考えている。こういった迂回してアメリカに渡る製品を「transhipped goods」という。これらに対しては当然、ダイレクトにアメリカに輸出されるものと同等の関税をかけなければフェアでない、ということになる。
ところが、記事によれば、この「transhipped goods」を狙って高関税をかける方法について、通告レターでも曖昧になっているそうだ。例えば、完成したもの(finished goods)のみが対象なのか、材料(components)が迂回したら対象なのか、明らかになっていない。
こういった詳細を詰めるために、それなりの「猶予時間」を活用できる国がアジアにまだもあるということだ。
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他方で、電化製品や衣料品の輸出がこれまでの発展を支えてきた新興国は、明らかな「敗者」となった、とこの記事は伝えている。
具体的には、上にあるカンボジアやベトナムだ。ベトナムはアジアの国でアメリカとの合意に達した最初の国ではあるが、ほとんど「交渉カード(leverage)」を持たず、日本より高い40%の通告を受けてしまった。
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|用意しすぎた日本、静観する中国
「タフネゴゴーシエーターであることを自ら証明した日本はトランプをイラつかせた」
このことが、緊密な同盟関係にあり、何度もピストン訪問をしたにもかかわらず「アジアの他の貿易パートナーと同じ扱いになった」背景では、とするエコノミストのコメントを報じている。
国内で米不足なのはとうにバレていた。それでも農家保護のために米国産コメの輸入増を断ったのが、トランプ氏の機嫌に触ったのかもしれない。
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The confusion caused is a "great gift" to China, which is trying to portray itself as a stable alternative to Trump's unpredictability, he added.
他方で、中国は静観することによって上手を取れる可能性を探っているのだろうか。日本や他のアジアの国が交渉してくれることによって、トランプ関税の設計の荒さや、大して影響がないのではというのが徐々にバレてきている、との指摘を本記事は伝えている。
そうした「混乱(confusion)」は、自らを安定した貿易パートナーに見せたい中国にとって、アメリカの交渉力をこれから削る「敵失」になっているようだ。
中国が当初からこの戦略をとったということはないだろう…スケールの大きい交渉はいつも動的なようだ。
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