自然災害の救世主 !?「キャット」とは?|FINANCIAL TIMES|2025.07.15

Catastrophe bond sales hit record as insures offload climate risks|Financial Times|2025.07.15

 



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Insurers are selling so-called catastrophe bonds at a record rate as they seek to offload the growing risk from climate change on to investors eager for high returns.

 

 「キャットボンド」という種類の債券がある。


「catastrophe bond」を略したもので、山火事や台風、地震といった大災害(catastrophe)のリスクを、債券の発行者である保険会社から投資家に移転する金融商品だ。


このキャットボンドの発行が急速に増えている。昨年一年間の発行額である177億ドルを超える 181億ドルの発行が今年の年初来あったことを、7月15日付の本 FT記事は伝えている。


是非全文を読んでほしい。



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|キャットボンドの仕組みとは

Buying the bonds can also provide investors with higher yields than traditional fixed-income investments such as government bonds.


キャットボンドが大災害リスクの移転になる仕組みはこうだ。


これらの債券(bond)は普通の社債より利回りが断然いい。ということは、高い利回りに相応なリスクもついてくる。そのリスクとは、大災害が起こった際にこの種類の債券は価格が大幅に毀損する仕組みになっているということだ。


この仕組みが発動すると、投資家は毀損した分の損を被る。他方で、キャットボンドを発行した保険会社はその分の償還(投資家へのバック)が免責になる。これが、キャットボンドは「ある種の再保険(a form of reinsurance)」と言われる所以だ。


 

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|「ババ抜き」か、それとも「社会全体でリスク負担」か

As disasters become more commonplace, insurers have had to pay out more than $100bn in natural catastrophe losses every year so far this decade, a number Swiss Re recently predicted could reach $300bn in a peak year.

“Insurers have no choice but to identify ways to offload increasing risk, and they’re doing it in the cat bond market, ” said…

The steadily increasing cost of traditional reinsurance - partly due to extreme wheather losses and rising asset prieces - have pushed insurers towards catastrophe bonds.

では何でこのキャットボンドの発行がハイペースになっているかというと、保険会社が自身ではリスクを追い切れないくらい頻繁に自然災害が発生するようになったため、投資家にリスクを負担して貰う必要があるからだ。


毎年どこかで自然災害が起こるのは普通になり、保険会社の保険金支払は毎年1,000億ドルを超えている。これがピーク時にはその3倍にまでなると専門機関は見ている。このリスクを保険会社の外に「移転」する仕組みとして、キャットボンドが適しているということらしい。



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日本で先日あったのは、企業向けの保険料が安くならないように大手の損保会社がカルテルを行った事件だ。これは「保険料調整事案」と金融庁の資料では言われているものだが、その背景には、自然災害の増加で保険金の払出が増えた損保会社において、収益維持のためには保険料値引きに繋がる価格競争を避ける意図があったことが指摘されている。


当然だが、保険会社がなければ保険は買えない。したがって、キャトボンドのような保険会社のリスクを投資家に分散する仕組みは、ある意味、社会目的事業と解釈しようもある。


他方で、リスクを投資家に広くバラまくという点においては、「キャット」の構造はかつてのリーマンショックの原因となったサブプライム商品(低所得者向けの住宅ローン債権を証券化したもの)と同様と言える。


「社会事業」か「ババ抜き」か。果たして、このキャットボンドの動きはいずれであろうか。


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