受難のワクチン製造企業|Financial Times|サクッと読める英文ビジネスニュース

Moderna is most shorted stock in S&P 500 as Americans skip jabs|Financial Times|2025.11.23





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“People have lost the narrative that they are essentially a source of infection for other people,”
「人々は、自分が他人への感染源(a source of infection)になり得るという認識を失っている」

モデルナの共同創業者ヌーバー・アフェヤン氏のコメントだ。

モデルナといえば、2020年3月にパンデミック(世界的大流行)と認定された新型コロナウイルスに対し、通常なら10~15年かかるワクチン開発を約9カ月で実用化した企業だ。

なるほど、ワクチン製造企業のトップともなると、コメントも「公的」目線だ。

このモデルナ、今回紹介するFT記事によると、第二次トランプ政権でのワクチンに対する方針転換の影響もあり、今やS&P500で最も空売りされている企業となり、その株価は新型コロナウイルス流行前以来の安値に下落したとのことだ。

興味深いのでぜひ全文を読んで欲しい。


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|栄光と転落

When it joined the S&P 500 index in July 2021, Moderna’s fortunes were flourishing. 
That year, the US government bought hundreds of millions of Moderna Covid vaccines. Chief executive Stéphane Bancel became a multi-billionaire. Moderna’s 2021 operating margin was higher than Warren Buffett’s Berkshire Hathaway.
モデルナ(Moderna, Inc.)は2010年に米国マサチューセッツ州で設立されたバイオテクノロジー企業だ。

2015年には初のmRNAワクチンをヒトに投与し、2018年にはNASDAQへの上場を果たした。

その後、パンデミックとなった新型コロナウイルスに関して、同社は2020年末にFDAからCOVID-19ワクチンの緊急使用許可を取得した。

同社の株に関しては、2021年のワクチン需要を追い風に時価総額が急拡大。

同年7月21日にS&P500構成銘柄に正式に組み入れられたモデルナは、米政府が数億回分のワクチンを購入したこともあり業績は絶好調に。

その頃のモデルナの営業利益率は、あのウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイを上回る程の勢いだった。


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But Moderna has been unprofitable since 2023, well before Kennedy brought his vaccine scepticism to Washington this year. Its revenues have dropped by more than 80 per cent from 2021.
ところが栄光は長く続かず、2023年以降は赤字が続く。

ワクチンに懐疑的な立場(vaccine scepticism)をとるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏が厚生長官についたこともあるが、業績不振はその前から始まっていた。

というのも、アメリカ人の「ワクチン疲れ」によって、接種率が低下していることが影響していたようだ。今や売上高は2021年比で80%以上減少している。

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|「止め」のヤバい奴

The US health secretary is a long-standing vaccine sceptic. In June, Kennedy fired all the members of a top vaccine advisory committee, and two months later limited the government’s recommendations for Covid shots. 
Last week, the Centers for Disease Control and Prevention, which is part of Kennedy’s department, changed its website to say: “Studies have not ruled out the possibility that infant vaccines cause autism.”
トランプ第二次政権の厚生長官(日本の厚生労働大臣に相当)といえば、政治家・弁護士・環境活動家のロバート・F・ケネディ・ジュニア氏だ。

その苗字が示す通り、彼は名門ケネディ家の出身で、伯父は第35代大統領ジョン・F・ケネディだ。御年71歳で、ノンネイティブには彼の英語は何だか聞き取りづらい。

実はこの人、先の大統領選ではトランプさんの対立候補だった。

同氏は民主党候補として出馬後、無所属に転じて選挙戦を続けが、途中で撤退を表明、共和党候補ドナルド・トランプ氏への支持に回った。

一時は「第3の候補」として一定の支持を集めたが、勝利の見込みがないと判断したため撤退し、「トランプ氏とは多くの重要な政策で一致している」としてトランプ支持となった。今のポジションがトランプ支持の見返りだというのは、アメリカ人でなくても知っている。


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このケネディ厚生長官、長年ワクチンに懐疑的な立場なのだが、厚生長官になってからの所業が強烈だ。

就任後に
ワクチン諮問委員会の専門家17人を全員解任して替わりとして懐疑派を起用。先週は米疾病対策センター(CDC)のウェブサイトを改訂し、「乳児へのワクチン接種が自閉症を引き起こす可能性を否定する研究はない」という持論を記載させた。

CDCのこれまでの科学的なコンセンサスは「ワクチンと自閉症に関連性はない」だった。関係者にとっては、白が黒になったような大転換が起こった。


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|終わらない受難

Boston-based Moderna has been the S&P 500’s most shorted stock since the end of September, according to S3 Partners. Short sellers had about $622mn of unrealised profits in the company in 2025, S3 said.
Moderna shares closed at $23.72 on Friday, down 43 per cent so far this year, and matching its share price in February 2020.
こういった政治的圧力による政策変更について、一部では「アメリカの公衆衛生機関は機能不全」とまで言われている。

モデルナ株は金曜日に23.72ドルで取引を終え、年初来では43%の下落。株価は2020年2月の水準に戻りました。

株が下がるということは、その方向に賭けて儲かる空売り投資家(short sellers)が群がる。

今やモデルナは、S&P500で最も空売りされている企業(the S&P 500’s most shorted stock)となった、というのが今回のストーリーだ。

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“Why should you follow traffic laws? You don’t just put yourself in harm’s way. This is a transmissible disease.” And by not getting vaccinated, “you are not just an innocent bystander but a culprit”.
「交通法規を守るのは、自分だけでなく他人を危険にさらさないため」
「ワクチンを打たないことは、単なる傍観者ではなく加害者になること」

冒頭にも載せたモデルナ創業者のコメントだ。

全くその通りで、我々は数年前の危機感を失いつつある。

若しくは、アメリカの個人主義はそんな振り返りすら許さないほどのレベルに達しつつあるのか…

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