「循環取引」はAI業界のお家芸?|Financial Times|サクッと読める英文ビジネスニュース
OpenAI’s circular deals|Financial Times|2025.10.07
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So in each of these deals, the money is flowing from OpenAI to its partner companies and then back to OpenAI or the same in reverse.
「循環取引」といえば、先日旧経営陣4人の逮捕(金商法違反)があった、AI議事録サービスの「オルツ」。
支払った広告宣伝費が販売店を経由して自社に還流し、あたかもサービスが販売されたかのように見せかける「三角循環取引」を行っていた。計上した架空の売上は約119億円だったそうだ。
きしくも、本家アメリカのAI業界でも「循環取引」が話題になっている。
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OpenAIが最近になって締結した複数の「ディール」。具体的には、半導体メーカーのエヌビディアやAMDから大量のチップを購入する契約や、クラウドコンピューティング企業のオラクルやCoreWeaveとのサービス契約のことを指す。
10月7日付のFT記事は、これらの契約が「OpenAIからパートナー企業に支払われた資金がOpenAIに戻ってくる仕組み(またはその逆)」になっており、オルツと同様「循環取引」だとする指摘があることについて伝えている。
ぜひ全文を読んでほしい。
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|AIインフラの陣取り争い
They want to be the infrastructure developer, the builder of the leading models and the provider of the top tools. And as a result, they’re striking deals across the space to lock in computing power and the AMD deal, as well as the Nvidia deal, recently kind of fall under that ambition.
アメリカのAIは覇権争いの真っ只中だ。その中心的存在にならんとしているOpenAIは先週、AMDから大量のチップを購入する契約を結んだ。同社はつい先月、NVIDIAと戦略的パートナーシップを締結したばかりだ。
もちろんのことだが、その規模はオルツの比ではない。
NVIDIAとのパートナーシップの中身だが、OpenAIがNVIDIAのGPU数百万台を活用してAIデータセンターを構築するというものだそうだ。逆にNVIDIAはOpenAIに対し、1ギガワットの展開ごとに最大1000億ドル(約15兆円)を段階的に投資することになっている。
こんなに規模がでかいのは、彼ら自身が「infrastructure developer(インフラ構築)」になることを目指しているからだ、と本記事は言う。古い例で言うと、OSといえばウィンドウズ、という状態にしたマイクロソフトのような存在…といったところだろうか。
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|それって「循環取引」じゃね?
And let’s take the Nvidia deal as an example. So Nvidia plans to invest up to a hundred billion into OpenAI over the period that OpenAI is building out its data centres. OpenAI is gonna spend most of that money, from what we understand, on buying chips from Nvidia. So it will take Nvidia’s investment, leverage that investment and then go back and buy chips directly from the company.
ところが、金の流れを見ると、これらのディールに疑問が湧く。
何か複雑そうな取引ではあるが、結局のところ、『NVIDIAは自分が出したお金で自分の製品を買って貰ってるだけだじゃない?』ということだ。
すなわち、NvidiaはOpenAIに最大1000億ドルを投資する予定なのだが、OpenAIはその資金の大部分をNvidiaからチップを購入するために使う。つまり、資金が両社間で循環しているだけで、外部には流れていないという意味で、モロ「循環取引」と言えるのだ。
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|KEEP GROWING! という呪い
And I think the central concern is that this is stoking an AI bubble, and this is all being paid for by revenue, which is not yet in existence and may not be in the near future.
Well, George, what can AI companies do, if anything, to avoid a bubble bursting?
They need to keep growing. I think this is the logic on which this whole circular economy is being built. If AI demand continues to grow in the way that OpenAI certainly think it will, then a lot of these bets pay off and everything is fine.で、FTが何を心配しているかというと、
こういった「実質的な価値創造が伴っていない」契約が、関係する企業の株価を押し上げることがあり、そうなっているのだが、これは「バブル」以外の何者でもないということだ。
暗号資産の「バブル」と一緒で、『今後も需要が拡大する』といった信念に近い「ロジック」が、価値上昇の前提になっているので(the logic on which this whole circular economy is being built)、その信念が冷めないようにするには成長し続ける(keep growing)しかないのだ。
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とはいえ、内輪での盛り上がりは早晩冷める。
というか、「循環取引」が指摘された段階で、日本のオルツと同様、胡散臭さが気付かれ始めた、といえないだろうか。
「需要が鈍化する」「中国の安いモデルが台頭する」といった「信念」が折れるシナリオは、十分あり得るように見えるが。電自動車では既に顕在化しているように…
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