【FT要約】ガソリン代が上がると政権が倒れる?アメリカ政治を動かす「1ガロン=4ドル」の法則|英文ビジネスニュース日本語解説




この記事の論点:

「アメリカで政権支持率について知りたければ、ガソリンスタンドに立ち寄ってみるといい」

— アメリカ政治の歴史が証明する、「1ガロン=4ドル」後に起こる「法則」について考察

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"If you want to know how an American feels about elected officials, stop at a gas station."

「アメリカ人が政権をどう思っているか知りたければ、ガソリンスタンドに立ち寄ってみるといい」

ある専門家はこう語る。

今年春以降、アメリカではガソリン価格が高水準で推移している。先日、再び1ガロン=4ドルの大台を超えた。これはアメリカ人にとって、政権支持を左右する「節目」と言われている。

似たような状況は、日本でも見られる。1ドル=160円を超える円安が定着し始めた頃と時を同じくして、政権に対する不支持の声が目立つようになった。

物価と政治には、どのような関係があるのだろうか。今回紹介する記事を交えながら、そのメカニズムを紐解いてみたい。

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イラン情勢の緊迫で、ガソリン価格が再び高騰

The rise in costs for motorists underlines the war's continued impact on US consumers, after official statistics last week showed price pressures had eased last month during a period of détente in the conflict.

Since its outbreak in late February, the war has ripped through global energy markets, pushing crude prices well above $100 a barrel in April and May as Iran largely choked off shipments through the Strait of Hormuz, a crucial waterway for oil shipments.

アメリカの物価(CPIの前年同月比伸び率)は、今年に入って激しい動きを見せている。その原因は勿論、緊迫が続く中東情勢を反映したエネルギー価格の変動だ。

今年の始めからの原油価格の高騰・ガソリン高騰を受け、5月に前年同月比4.2%まで上昇したCPIは、その後米イラン間の一時的な停戦の覚書による「一時的な緊張緩和(a period of détente in the conflict)」の後、6月には3.5%にまで落ち着いていた。

ところが、その停戦協定が破れ、再び報復攻撃などの応酬が始まったことで、原油価格は1バレル=90ドル近くまで再高騰。今年4−5月に起こった100ドル越えが見ててくるようになった。

物価圧力が再び強まるなか、市民が真っ先に突きつけられたのが「ガソリン1ガロン=4ドル超え」という現実であった。

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「石油備蓄」の底が見え、価格を抑える手立てがない

Traders warned that oil stockpiles, which helped avert a wider economic crisis earlier in the war, have dwindled, leaving western economies with minimal buffers to absorb higher prices.

今回、多くの専門家が事態は深刻だと指摘する理由は、石油の国家備蓄(oil stockpiles)に余裕がないことにある。

現在のアメリカの備蓄量は約3億1,900万バレル前後まで低下。これは1983年以来、約40数年ぶりの低い水準だ。

紛争の初期段階では、この備蓄を放出することで経済危機の拡大を防ぎ(avert a wider economic crisis)、価格ショックを吸収することができていた。しかし、今度はその余力(buffers to absorb higher prices)はもうほとんど残されていない。

価格のショックを和らげるクッションがない状態では、原油不足のニュースに対してガソリン価格がダイレクトに跳ね上がる。4ドル台にあっけなく戻ってしまった事実は、その余裕のなさを証明しているのだ。

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11月の中間選挙を前に、限界を迎える有権者の忍耐

Voters have gradually lost patience with the conflict. An FT poll this month found 58 percent of voters said the war had not been worth the cost. The same survey showed that Trump's approval rating had slipped to just 36 per cent.

「この戦争にそれだけの費用をかける価値はなかった(had not been worth the cost)」

英フィナンシャル・タイムズ(FT)の世論調査では、有権者の58%がそう回答した。

同調査でのトランプ大統領の支持率は、わずか36%にまで落ち込んでいる。11月に中間選挙を控えるトランプ政権にとっては正直まずい状態だ。

ところでアメリカの歴史を振り返ると、ガソリン価格が「1ガロン=4ドル」を超えた局面では、必ずと言っていいほど政治や政策の大波乱が起きている。

  1. 2008年(ブッシュ政権): 史上初の4ドル突破(一時$4.11)を受け、支持率が20%台へ壊滅的に下落。同年の大統領選でオバマ氏が勝利し、政権交代の決定打に。
  2. 2011〜2012年(オバマ政権): 「アラブの春」等による原油高($4.00前後)に対し、再選を狙うオバマ大統領が3,000万バレルの国家石油備蓄(SPR)を緊急放出。
  3. 2022年(バイデン政権): ウクライナ侵攻で過去最高の$5.01を記録。中間選挙を前に、半年間で1億8,000万バレルという「史上最大規模の備蓄放出」を断行。
  4. 2026年(トランプ政権・現在): 過去の(バイデン政権下での)大規模放出も影響して備蓄が低水準にあり、「備蓄を放出して価格を下げる」というカードが使えない窮地に。
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「逆相関」が示す政治のリアル

The average US driver fills up their tank about 50 times a year. ClearView research shows a meaningful inverse relationship between presidential approval and prices at the pump.

調査会社によると、大統領の支持率とガソリン価格の間には、一方があがるともう一方が下がるという明確な逆相関関係(inverse relationship)があるという。

アメリカの平均的なドライバーは年に約50回も給油する。車社会のアメリカにおいて、ガソリンスタンドに表示される価格は、毎日生活費を削られている実感を直接訴えかける存在だ。

日本で言えば、主食であるコメの価格や毎日の電気代が急騰するような感覚に近いだろうか。

4ドル超えの後に支持率の急落や選挙での敗北、あるいは強力なエネルギー政策の転換がセットで起きてきたという「法則」。

対策の選択肢を失いつつある現政権に対し、この「4ドルの法則」は今回も発動してしまうのだろうか…

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