【FT要約】世界が米国債を「投げ売り」中?イラン情勢下で加速する「持たざる国」の苦境|サクッと読める英文ビジネスニュース

Foreign central banks sell US Treasuries in wake of Iran war|Financial TimesMAR 31 2026




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“They are pulling in rainy-day money.”
「彼らは、いざという時のための備え(rainy-day money)を引き出している」

専門家はこう分析する。ここでの「They」は「アメリカ以外の国家」のことを指す。

国家が「備え」を引き出す。もちろん今のイラン情勢を受けてのことなのだが、今回紹介する記事によれば、「引き出し」ているのは備蓄原油のことではない。

寧ろその高騰した原油を買うために、虎の子の資産である「アメリカ国債」を現金化する必要に迫られた件について、今回紹介する記事は伝えている。

ぜひ全文を読んで欲しい。


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|NY連銀に眠る「虎の子」資産

Foreign central banks have slashed their holdings of Treasuries at the New York Federal Reserve to the lowest level since 2012, as countries sell the US government bonds to prop up their economies and currencies in the wake of the Iran war.
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)ニューヨーク支店は、公的機関(中央銀行、政府や国際機関)が保有している米国債の保護預かりを行っている。この役割は「カストディ(保管・管理)業務」と言われる。

もちろん今日、「米国債の保有」は電子データ上の記録でしかない。つまり、NY連銀のサーバーにあるデータベースには、国債の所有権が書き込まれているという仕組みになっている。

ちなみに、データでなく実物資産としてNY連銀が持っているのが「金(塊)」で、これを地下金庫からテロが盗もうとしたのが映画「ダイハード3」だ。

外国政府が米国債を売買する際、ニューヨーク連銀の口座を通じて決済が行われる。その決済記録によれば、海外の中央銀行による米国債保有残高は2012年以来の低水準(to the lowest level since 2012)まで激減したそうだ。NY連銀が保護預かりしている米国債の価値は、2月25日以降で820億ドルも減少した。


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|「戦費」を確保せよ

The data suggested foreign official holders could be “stocking the war chest” by cashing out Treasuries, according to Stephen Jones, chief investment officer at Aegon Asset Management.
では何で公的機関が米国債を処分しているかというと、シンプルに「カネがいるから」だ。
イラン戦争の勃発後、各国は自国経済と通貨を下支えするために「戦費を蓄える(stocking the war chest)」ことが求められているのだ。

どういうことかというと、日本が今ガソリン補助金にバンバン公費を使っているように、特に原油輸入国だと経済対策にカネがかかるのだ。

その捻出方法として、各国は保有している米国債を現金化するという手段をとっているわけだ。

記事によれば、トルコ、インド、タイなどの石油輸入国は、ドル建てで取引される石油の価格が高騰したため、米国債を売却して調達したドルでやりくりしているそうだ。


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「多くの国が、自国通貨のこれ以上の減価を望んでいない(don’t want their currencies to weaken further)」と専門家は見る。

輸出企業に有利だから自国通貨は安くていいと呑気なことは言ってられない。今年2月中旬に145~148円前後で推移していたドル円相場は、足下では160円目前にまで円安が進んでしまった。

当然ながら、通貨安は現地通貨建てでの原油価格を押し上げる。その先に待っているのは、ガソリン補助金のさらなる増額が迫られる状況だ。それもできなくなると、ついに家計負担増が現実になってくる。

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その対抗策として今日本政府が検討しているのが為替市場への介入だ。
中央銀行が自国通貨を支えようとして外国為替市場で介入を行う場合、通常米ドルの売却が伴う。売るためのドルを捻出するために米国債を売却する、というわけだ。

今のところ公表された大規模介入はまだ起きていない。もっとも、日本では1ドル160円〜162円のレンジに突入した場合、日本政府が単独、あるいはG7の理解を得て介入に踏み切る可能性が極めて高いと言われているが…


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|米国インフレ期待への「いらん」ストレス

Foreign central banks are selling US bonds at a time when the Treasury market is already under pressure as traders worry that the Middle East conflict could drive up inflation. 
タイミングは最悪だ。この海外の中央銀行による米国債売却が起こっているのは、米国債市場がすでに「インフレ加速の懸念」という圧力を受けている最中だ。

紛争が激化した今年3月以来、米10年物国債の利回りは急速に上昇。3月上旬の約4.0%台から、一時は4.3%台にまで上昇した。

通常、有事の際は「安全資産」として国債が買われ金利が下がる傾向があるのだが、今回はエネルギー価格高騰によるインフレ懸念がその効果を打ち消した形だ。

ついこないだまで、市場では年内に複数回の利下げが期待されていた。ところが今や、FRBは金利を下げられなくなるだろうとの雰囲気に変わってしまったのだ。


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That has pushed yields on both two- and 10-year Treasuries up this month by the most since 2024, increasing borrowing costs for the government as well as businesses and households.
2年債と10年債の両方の利回りは今月、2024年以来最大の上昇幅を記録。

政府の借入コストが上がることは、企業や家計(businesses and households)の借入コストを押し上げることを意味する

今回のイラン攻撃がもたらすとされている「グローバルリセッション」。その火元はアメリカ経済かもしれない…


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