【NY Times要約】再エネ時代の新たな依存:なぜ世界は中国を避けられないのか
China’s Electrostate Is Poised to Win From War in the Middle East|The New York Times|April 13, 2026
再生可能エネルギーへの転換は、本当に「依存からの脱却」になるのか。
—中東リスクを機に露わになった、中国に集中する再エネ供給網という新たな依存を整理。
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“You’re not going to compete with China at this point.”「現時点で中国と競争することは不可能だ」中国系のリサーチ会社の専門家はこう指摘する。
“This is the right time for a shock like the war in Iran to suddenly catalyze even more investment and interest in renewables,”
何の競争かというと、今回のイラン戦争で急に勢いづくこととなった、『再生可能エネルギー(renewables)投資』についてだ。
現在進行中であるホルムズ海峡の封鎖騒ぎは、日本を含む世界各国に中東の石油とガスに依存するリスクを思い知らせることとなった。
同時にこれらの国は、再生可能エネルギーへの道は全て中国を経由していることに気づき始めている件について、今回紹介する記事は伝えている。
この中国の優位。偶然か、はたまた計画されたものか。
偶然でも戦争対応でもない。数十年単位で積み上げられた産業政策の「結果」だ。
ぜひ全文を読んで欲しい。
その背景には、今回の中東情勢が各国に迫ることとなった、再生可能エネルギー電力網の構築(to build grids)があると本記事は言う。
具体的に「再生可能エネルギー電力網」とは、「発電所」にあたる太陽光パネルと、それをエンドユーザーまで送るための高電圧ケーブルや変圧器、過不足を調整するための蓄電池といった、発電から送電・配電、蓄電までの一体のインフラを指す。
ぜひ全文を読んで欲しい。
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|再エネ電力網が生む新たな依存:中国製テクノロジーの独占
But for many countries, the push to build grids based on renewable energy is creating a new dependence on technology from China.
Chinese companies dominate the manufacturing of nearly every component of a modern grid, including solar panels, high-voltage cables, transformers and batteries that store energy for later use.今多くの国で起きつつある変化。それは、「中国のテクノロジーへの新たな依存(a new dependence on technology from China)」だ。
その背景には、今回の中東情勢が各国に迫ることとなった、再生可能エネルギー電力網の構築(to build grids)があると本記事は言う。
具体的に「再生可能エネルギー電力網」とは、「発電所」にあたる太陽光パネルと、それをエンドユーザーまで送るための高電圧ケーブルや変圧器、過不足を調整するための蓄電池といった、発電から送電・配電、蓄電までの一体のインフラを指す。
実はこういった現代の電力網を構成するほぼすべての部材の製造は、中国企業に支配されている。したがって、自前でこれらの技術を持たない国が再エネ網構築を志向すると、必然的に中国企業に「依存」することになるというわけだ。
中国のこの支配、イラン戦争を見越した動きによるものだろうか。
中国のこの支配、イラン戦争を見越した動きによるものだろうか。
そうではない、実はこれらの中国企業、AIによる膨大な電力需要を満たすための電力網整備を支援すべく、既に海外展開を広げていたのだ。
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|中国企業巨大化の理由:投資と保護の国家戦略
For decades, China has poured hundreds of billions of dollars into green energy, making it a cornerstone of the country’s drive for energy independence.
It also blocked foreign companies from competing in large segments of its domestic market, such as manufacturing wind turbines and electric car batteries, to ensure that Chinese companies could grow into giants.中国の再エネインフラ企業が海外展開できるほどに発展したのは、それが中国の「国策」だったからだ。
中国は何十年もの間、数千億ドルをクリーンエネルギーに投じ、国家のエネルギー自給自足(energy independence)の礎としてきた。
さらに同国が賢いのは、単純に「投資して参ります」だけではなく、その「保護」にも抜かりなかった点だ。
中国政府は風力タービンや電気自動車(EV)用バッテリーの製造といった再エネインフラの大部分において、国内市場への外国企業の参入を阻止した。
例えば中国EVメーカーの代表たるBYD。同社はもともとバッテリーのメーカーだった。
BYDには累計で数兆円規模にのぼるとされる補助金や税制優遇が与えられたが、そういった補助のみならず、深セン市においてほぼEV化したバスやタクシーが殆どBYD制となったり、中国製バッテリーを積まないEVには補助金が出ない措置が行われたりといった優遇も与えられた。
中国企業はそういった「庇護」の下、14億人という世界が羨む巨大市場において、自国企業は巨大企業(giants)へと成長できたというわけだ。
中国企業はそういった「庇護」の下、14億人という世界が羨む巨大市場において、自国企業は巨大企業(giants)へと成長できたというわけだ。
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|AIと戦争が加速させる海外進出
Chinese battery manufacturers and renewable energy equipment makers were already raising money in Hong Kong to fund an overseas push, anticipating a surge in demand from power-hungry A.I. systems.
But the war has added fresh urgency and new opportunities.そのような「国策」下で成長した、中国のバッテリーや再生可能エネルギーの機器メーカー。彼らは既にAIシステムによる電力需要の急増(a surge in demand)を見越し、海外進出の資金を調達するために香港での上場を進めていた。
これに今回の戦争要因が加わり、新たな緊急性と機会(fresh urgency and new opportunities)がこれらの中国企業の更なるライジングをもたらしている。
中国製の太陽光パネルと言えば、一昔前は「作りすぎて余ったから安く売る」の典型で、海外へのダンピング輸出で炎上した過去がある。
中国製の太陽光パネルと言えば、一昔前は「作りすぎて余ったから安く売る」の典型で、海外へのダンピング輸出で炎上した過去がある。
2012〜13年頃に中国と歴史上最大規模の貿易紛争を繰り広げたのがEUだった。
当時、EUは中国製パネルに対し、最高47.6%という高率の反ダンピング関税を課そうとしたのだが、中国が側が折れる形で事実上の数量・価格制限を行うこととなった。
ちなみに、中国製パネルに対して輸入制限を行わなかったのが日本だ。2012年に始まった「固定価格買取制度(FIT)」によって爆発的に普及した太陽光発電だが、そのコストを抑えるために発電事業者が安価な中国製パネルを大量に採用した結果が、現在地方の山肌を埋めつくす黒光りする物体たちだ。
結果として日本勢は価格競争で太刀打ちできなくなり、国内のパネル生産から次々と撤退・縮小に追い込まれたのは、現在の中国企業の隆盛と対照的だ。
当時、EUは中国製パネルに対し、最高47.6%という高率の反ダンピング関税を課そうとしたのだが、中国が側が折れる形で事実上の数量・価格制限を行うこととなった。
ちなみに、中国製パネルに対して輸入制限を行わなかったのが日本だ。2012年に始まった「固定価格買取制度(FIT)」によって爆発的に普及した太陽光発電だが、そのコストを抑えるために発電事業者が安価な中国製パネルを大量に採用した結果が、現在地方の山肌を埋めつくす黒光りする物体たちだ。
結果として日本勢は価格競争で太刀打ちできなくなり、国内のパネル生産から次々と撤退・縮小に追い込まれたのは、現在の中国企業の隆盛と対照的だ。
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|今回はダンピングではない:生き残り中国企業の競争力
Beijing has tolerated “brutal domestic competition requiring companies to continuously innovate in order to stay in the game,”さて、今回の海外展開。前回の「ダンピング輸出」とは様相が異なるというのが専門家の見方だ。
すなわち、中国政府は「企業が生き残る(stay in the game)ために絶え間ない革新を強いるような、残酷な国内競争(brutal domestic competition)」を容認してきた。
その勝者たるメーカーは、その磨かれた製造技術と加速された革新によって、自ずから海外への成長を志向しているとのことだ。
本記事では、中国系の太陽光企業がポーランドに欧州初の工場を建設する件や、別のバッテリ-メーカーがスペイン北部に工場を建設する例が紹介されている。
本記事では、中国系の太陽光企業がポーランドに欧州初の工場を建設する件や、別のバッテリ-メーカーがスペイン北部に工場を建設する例が紹介されている。
残酷な競争を生き抜いた中国企業は、今や「品質」目線で世界に選ばれつつあるということだろうか。
再生可能エネルギーは「脱・依存」の象徴だった。だが現実には、依存先が中東から中国に変わっただけかもしれない。
そんな中報じられた、大阪・関西万博EVバスの大量廃棄という「負の遺産」問題。「国産EV」と言いながら、車両の製造そのものは中国のバスメーカーへの委託だったことが明らかになっている。結局は昔の「ダンピングパネル」と同様「安かろう悪かろう」だったのか、それとも粗悪品をつかまされただけだったのか。
今回NYタイムズが報道した、中国の再エネ企業の躍進。誇大広告だったかどうかが分かるのは数年後か…
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|再エネ覇権の行方:中国依存は「第二の石油」になるのか
この勢いが、冒頭の「現時点で中国と競争することは不可能」の根拠だ。再生可能エネルギーは「脱・依存」の象徴だった。だが現実には、依存先が中東から中国に変わっただけかもしれない。
そんな中報じられた、大阪・関西万博EVバスの大量廃棄という「負の遺産」問題。「国産EV」と言いながら、車両の製造そのものは中国のバスメーカーへの委託だったことが明らかになっている。結局は昔の「ダンピングパネル」と同様「安かろう悪かろう」だったのか、それとも粗悪品をつかまされただけだったのか。
今回NYタイムズが報道した、中国の再エネ企業の躍進。誇大広告だったかどうかが分かるのは数年後か…
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