米国債は無双?|FINANCIAL TIMES |2025.02.20
FT | Will the bond market rein in Donald Trump?(2025/02/20)
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"Get interest rates brought way down" と大統領自ら金利が下がることを優先事項に掲げた米新政権。
他方で、新政権が打ち出した政策、例えば関税の引上げ、大規模減税、(金がかかりまくる)不法移民の強制移送といったものは、寧ろインフレや財政不安を助長すると指摘されている。
そうなった場合、普通今後は金利が上がるか、又は中銀が金利を上げる。
2月20日付の Financial Times全面特集 | Will the bond market rein in Donald Trump? では、先日長期金利が14か月振りの4.8%まで上昇した米国において、米国債のマーケットはトランプ政権の新政策をどれだけ制約できるか? という視点から、興味深いインサイトを伝えている。
記事の結論は「やっぱり米国債は無双だ」というものだ。本記事は全面特集の長い記事であるが、米国債の最大の海外投資家である日本への言及もあり、最後まで面白く読むことができる。
それでは一緒にポイントを読んでいこう:
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|追加関税はインフレ要因
But that aspiration will be tested in the coming months as investors navigate cross-currents caused by tariffs, immigration clampdowns and...から始まる最初から3番目のパラから、4-5パラ分は基礎情報だ。書き出しにある、今後試練を受ける「that aspiration」とは、冒頭に書いた「金利は下がるべき」との米新政権の意向を指す。
少し下がったところにある、Fed(米中銀)高官の指摘;
Several senior Fed officials have said these may fuel price pressures, and the central bank has paused a short-term rate cutting cycle that began last year...のパラグラフは、最近のFedの動きを簡潔に説明しているので押さえておきたい。
内容としては、先日導入された、中国輸入品に対する10%の追加関税がまさにそうだが、
- 新政権による関税強化策は、当然として国内でのインフレに繋がるだろうという点、
- 現に米国のインフレ率はターゲットの2%を上回り続けており、先日FOMCは利下げを見送ったばかりだ、
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|それでも借金しますけど、何か?
以上のようなことは和文メディアも十分に伝えているので、わざわざ英字新聞を読まなくても…と思うかもしれないが、FTはここからが面白い。特に;Even if those scenarios do not come to pass, the already large gap between the US government's spending and its tax revenue is likely to widen further, necessitating more heavy debt issuance into a market...から始まる、米国の財政赤字とその赤字をファイナンスするための米国債について書かれた数パラは、本記事の核心部分だ。
内容としては大体次の通りだ:
- 関税強化のせいで物価高 → 中銀が金利上げ のシナリオに限らずとも、
- 新政権では第一期政権が行ったような減税策がとられることが想定されており、財政赤字は今後さらに膨らんでいく(→ 財政不安により金利が上がる)ことが予想される。
- 思い出されるのは、イギリスで財政不安が金利上昇ショックをもたらした例、即ち、2022年に起こったトラスショック(財政の裏付けのないミニ予算発表→英国債売り、金利高騰→政権退陣)だが、
But nobody can say for sure at what point investors might start pushing back against the administration. ...
として、米国では英国トラス政権の時のような状態、即ち、財政の持続可能性不安を警告するマーケットからの圧力に政権が屈する事態は想定されにくい、としている。米国債の発行残高28兆ドルは、英国の規模の8倍に匹敵する。
これと同じパラにある "Is the debt financeable? It is, until it isn't" (「米国は借金可能、それができなくなるまでね」)とする、元財務省職員の潔いコメントにはついクスッとしてしまう。
では何でそうなのかというと、その後のパラにある;
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では何でそうなのかというと、その後のパラにある;
Besent will be helped by the intrinsic advantages of Treasuries, including their vast liquidity and the status of the dollar as the world's reserve currency, as well as the lack of any obvious alternative.から始まるパラが答えで、本記事のポイントはこれに尽きる。内容としては、「米国債ほどの投資先って他にないでしょ」ということだ。Besentは新しい財務長官の名前だ。
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|本当に無双か?
このセクションは、"Is the market bulletproof? No."(では米国債マーケットは無敵?違うし)で締めくくられ、さらに深掘りする次のセクションに繋がっていく。是非読んでおくべき箇所としては、しばらく進んだところにあるが;市場には「債券自警団(bond vigilantes)」と通称呼ばれる、状況次第では国債を売りまくって国に財政規律の正常化を迫る投資家がいるらしく、上述の英国でのショックではこの自警団の行動が機能したと言われている。
ところが、このパラで言っているのは、現在の米国債市場はこの自警団が機能した90年代と比べると規模がデカすぎて、自警団の働きに期待することは難しい、ということだ。
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|wait and see モード
では、国内がダメなら海外の買い手はどうかについて、Japan and China remained the two largest owners of Treasuries in December, but both countries had continued to reduce their positions over the course of 2024.
から記事の最後まで続く、米国外の買い手に関する説明が非常に面白い。現時点で米国債の最大の海外保有国は日本、それに次いでが中国だが、これらの国が今後保有を止めるかについては;
But many observers are sceptical that large-scale selling of US government debt could take hold, not least because few other asset classes could offer the yield, creditworthiness...を含むパラが説明している。内容としては、利回り、信用、流動性の点からキングたる米国債に関しては、それから乗り換える代替の投資先は他にそうそうない、と伝えている。日本の長期金利が現在1.4%越えという歴史的高さであっても、米先輩は5%近くある。さらには、今後いざ戦争などの地政学上の不安が生じた場合、「安全な逃避先」としての米国債の無双ぶりはより高まっていくという。
Strategist also say that offloading US assets could ultimately inflict self-injury on the selling countries. "The moment you start, prices will fall and you'll be selling into a weaker and weaker market,...
さらに、とどめとして伝えられているのは、大口の保有者、例えば中国がいざ米国債を売ろうとした場合、結局大損を被るのは売りを始めた中国自身であるということを伝えており、そのことを"self-injury"(自傷行為)と表している。
売りを出した投資家はどんどん値が下がっていく状況で買い手を見つけねばならず、売却損が立つのみならず、処分できない分の含み損も膨らんでいくことになる。
果たして、この状況が崩れるときにババを引く者は…?
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