【CNBC要約】トランプ政権が介入する金融の対立点。ステーブルコインに「利回り」は必要?|サクッと読める英文ビジネスニュース

Trump sides with crypto firms in trillion-dollar battle with banks over stablecoin yield |CNBC|Mar 4 2026


 

 

* * *

 “The Genius Act is being threatened and undermined by the Banks, and that is unacceptable,” 
「Genius Act(ジーニアス法)が銀行によって脅かされ損なわれている。容認できるものではない(unacceptable)」

トランプ氏はこうポストした。何の話かというと、やっぱり仮想通貨についてだ。

「ジーニアス法」とは、2025年7月にトランプ大統領が署名して成立した、アメリカで初めてのステーブルコインに特化した包括的な法規制だ。

ステーブルコインはアメリカでは暗号資産の一種だ。その名に「ステーブル」とある通り、価格変動が激しい暗号資産に対し、価値が法定通貨と1対1になるように「設計された」暗号資産のことを指す。

今回紹介する記事は、そのステーブルコイン関して、大統領が仲裁に入るほど関係が悪化している銀行界と暗号資産業界とについて伝えている。

ぜひ全文を読んでほしい。

* * *

|「利息」かどうか、それが問題だ

The dispute between the industries centers on whether crypto firms like Coinbase can offer yields on stablecoins. 

暗号資産業界と銀行界が対立しているのは、「利回り(yields)」の有無についてだ。

ステーブルコインは、持ってるだけで利子みたいなものが発生することがある。

というのも、発行体はコインの価値を安定させるために米国債などの裏付け資産で運用しているのだが、それによって運用利子が発生する。その運用利子をコインのホルダーに還元する形で提供すると、外形上は「ステーブルコインの利子」になるというわけだ。

 

* * *

While crypto companies see it as a consumer-friendly innovation that will let people earn money on their idle funds, banks have warned that the competing product could siphon trillions of dollars from their industry.
このことが銀行は気に入らない。それって預金の「利息」と一緒だろ、という主張だ。

仮想通貨企業側はこう説明する:「眠っている資金(idle funds)から利益を得られる、消費者にとって有益なイノベーション(innovation)」だと。

この業界の説明は大概、何が言いたいかのか不明なのがデフォだ。経済的には利子と一緒だということは、少なくとも認めたということだろうか。

銀行がなぜ気にしているかというと、そのステーブル何ちゃらという銀行預金の「競合製品(competing product)」によって、銀行業界から数兆ドルが流出する(siphon)と懸念しているからなのだ。
米財務省の調査結果によれば、ステーブルコインが利回りを提供した場合、銀行から最大6.6兆ドルの預金が失われる可能性があるという。

日本円だと1,000兆円を超える額だ。日本最大の三菱UFJ銀行の預金量が約200兆円なので、その5倍強の額が「流出」とは、ステーブルコインによる脅威が本当に途方もないのか、アメリカ人は「盛り」もスーパーサイズなのかどちらかだろう。


* * *

|ちょっと真面目に考えてみる

Allowing the less-regulated crypto industry to behave like quasi-banks could heighten systemic risk, banks contend.

とはいえ、銀行側の主張はもっともである。

規制の緩い(less-regulated)仮想通貨業界に「擬似的な銀行(quasi-banks)」のような振る舞いを許せば、金融システムのリスクが高まる、というのが銀行側の主張だ。

教科書的にいうと「銀行の信用創造」の源泉としての預金と、それを扱う銀行の役割についての話だ。

銀行の預金の一部は「貸出」にまわり、その借り手が使った分のいくらかがまた銀行に預けられ、そこから幾らかがまた貸出に回る。これを信用創造という。

この機能があるから、その「システム」の中心にいる「銀行」は規制で縛られてるし、破綻した時には公的資金で救済されてきた。

その機能を担う「責任」ゆえ、金融庁も常に銀行を監視しなければならないし、銀行側もコンプライアンスにバカ高いコストを払っているわけだ。

そんな責任とコストも負ってない暗号資産に、「銀行」まがいなことを堂々としてもらっては困るのだ。


* * *

|暗号資産の社会的「貢献」?

Crypto firms say that the risks are contained and that stablecoins backed by Treasurys will boost demand for U.S. debt.

対する仮想通貨企業側はこう弁解する。「リスクは限定的(contained)である」と。いや、こっちは社会的な責任の話をしている。

社会的メリットとして暗号資産はこう主張する。「ステーブルコインは米国債の需要を押し上げる」と。裏打ち資産として米国債を保有しているのだから、ステーブルコインのオーナーは立派な間接的「米国債保有者」で、その分財政に貢献しているというわけだ。

もしかして、これが政権側が暗号資産業界側に加担する理由だったりするだろうか。

政権側としても、全体で30兆円程度の時価総額(発行残高)があるステーブルコインの関係者、つまり大口の米国債「顧客」はないがしろにはできない。


* * *

とはいえ、そんな「陰謀論」大統領がどこまで真剣に気にしているかは怪しい。

というのも大統領一族が暗号資産業界とズブズブなのは周知の事実だからだ。一族が実質支配する仮想通貨プラットフォーム「World Liberty Financial」から数億ドルの富を築いたのは知らない方がウブというものだろう。

今回の動き。大統領側が「推し」すぎると、利益相反についての新たな疑問となってしまわないだろうか…。


*****

人気の投稿