秘密のレシピ:ステーブルのようでそうでないもの|Finaicial Times|サクッと読める英文ビジネスニュース
S&P downgrades Tether’s assets to lowest level Rating agency cites rising exposure to high-risk assets and lack of disclosures|Financial Times|2025.12.27
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“(he did not) want to give our secret sauce”「秘密のレシピを明かしたくない」
世界最大のステーブルコインであるUSDTを運営するテザー(Tether)社の現CEOのコメントだ。もっとも彼の過去の発言ではあるのだが。
ステーブルコインというものがある。
ステーブルコインというものがある。
「価格の安定性を目指した暗号資産」のことで、円建てのもの(JPYC)も最近生まれた。今回紹介するFT記事は、この「安定性」に物言いがついた件について伝えている。
ぜひ全文を読んで欲しい。
ちょっと専門的になるが、『価格の安定性』とは、コインの価値を米ドル、円などの法定通貨に連動させる(例:1USDT=1ドル)ということを指す。ビットコインのような暗号資産については、その価値が常に変動するのはご案内の通りだ。
では安定性を『目指す』とはどういうことかというと、
ぜひ全文を読んで欲しい。
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|「ステーブルコイン=無リスク」ではない
Tether’s ability to maintain its peg to the US dollar has been called into question by S&P Global Ratings,もう一度。ステーブルコインとは、価格の安定性を目指した暗号資産のことだ。
ちょっと専門的になるが、『価格の安定性』とは、コインの価値を米ドル、円などの法定通貨に連動させる(例:1USDT=1ドル)ということを指す。ビットコインのような暗号資産については、その価値が常に変動するのはご案内の通りだ。
では安定性を『目指す』とはどういうことかというと、
1USDT=1ドルが維持できるように、テザー社はコインを客に売った引き換えに得たドルを、主に米国債など安全資産で保有しておく、ということを指す。米国債より安定しているドル建て資産は存在しない。
このことを、高品質な証券で担保する(裏付ける)という。
何故こんなことをするかというと、例えば客の求めでステーブルコインをドルに戻す時に、その担保を処分して充当するためだ。
何故こんなことをするかというと、例えば客の求めでステーブルコインをドルに戻す時に、その担保を処分して充当するためだ。
両替する時に(手数料を無視して)1USDT=0.6ドル分しか両替するための資産がありません、では標榜する「ステーブル」とはいえないのだ。
世界最大のテザーの流通量は約1,840億ドル(約276兆円)なので、同社はその額をキープすべく「高品質な証券」を担保として保有している。おかげでテザーは世界最大級の米国債購入者だ。
保有している「高品質な証券」には運用益が生じる。同社は主に米国債の利息収入で利益を得ている。元本がすさまじい額なので、利息収入もすさまじい額だろう。
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|「約束(っぽいもの)」が壊れるとき
In 2022 Tether failed to maintain its peg with the dollar after coming under heavy selling pressure. In an interview at the time, Paolo Ardoino, now the company’s chief executive, declined to provide details about the hoard of government bonds kept in reserve, as he did not “want to give our secret sauce”.ところが、安定を『目指す』は『約束する』ではない。
2022年、テザーは大規模な売り圧力を受け、ドルとのペッグを維持できなかったことがある。その時はUSDTは一時約0.95ドルまで下落した。
当然、『価格の安定性』はどうなった?となるが、今はCEOになったパオロ・アルドイノ氏のその時のコメントが、冒頭の「秘密のレシピを明かしたくない」だ。
当然、『価格の安定性』はどうなった?となるが、今はCEOになったパオロ・アルドイノ氏のその時のコメントが、冒頭の「秘密のレシピを明かしたくない」だ。
テザー社は準備資産として保有する国債の詳細についての情報提供を拒否している。
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|「秘密のレシピ」にはリスクがいっぱい
In a note on Wednesday, the rating agency downgraded its assessment of Tether’s assets to “weak” from “constrained”. It also flagged “an increase in high-risk assets” backing the stablecoin, with corporate bonds, precious metals, bitcoin and secured loans accounting for 24 per cent of total reserves at the end of September, up from 17 per cent a year ago.月日は流れ2025年。
大手格付機関のS&Pは、テザーの資産評価を「制約あり(constrained)」から「弱い(weak)」に格下げた。格下げとは、テザーの「信用力」が落ちたということだ。
なぜ信用力が落ちたのか。
なぜ信用力が落ちたのか。
ステーブルコインを裏付ける資産に「高リスク資産の増加(an increase in high-risk assets)」があり、1USDT=1ドルをキープできるの?に対する不安が増したからだ。
ここで指摘されている「高リスク資産」とは、社債、貴金属、ビットコイン、担保付きローンなどだ。
これらの割合は9月末時点でテザー社の準備資産全体の24%を占め、前年の17%から増加している。極端な話、これら24%の「高リスク資産」の価値がゼロになった場合、1USDTは0.76ドル分の価値でしか(手数料を無視して)両替できないことになる。
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“A decline in the price of bitcoin or the value of other higher-risk assets, could therefore reduce collateral coverage and result in USDT becoming under-collateralised,” S&P analysts wrote. They added that the rising share of risky assets exposed the token’s reserves “to greater market fluctuations”.S&Pはこう言う。
「ビットコイン価格やその他高リスク資産の価値が下落すれば、USDTが過少担保(under-collateralised)になる可能性がある」と。
リスク資産の割合を増やせば、その分トークンの準備資産は「より大きな市場変動(to greater market fluctuations)」というわけだ。
他方で、同社は依然として準備資産の完全監査(full audits)ではなく、BDOイタリアによる証明書(attestations)を発行するにとどまっている」とのことだ。
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|拭えない疑念
Since being founded 11 years ago, Tether has been dogged by concerns over its poor disclosures and a lack of transparency.
Ardoino has previously said that hiring an auditor was a top priority, but the company still puts out attestations ? reviewed by BDO Italia ? instead of full audits of the reserves backing its stablecoin.では何で「秘密のレシピ」をS&Pが知ることができたかというと、テザーは2021年以降、四半期ごとに準備資産の内訳を示す「アテステーション(attestation)」の報告書を公開しているからだ。
他方で、同社は依然として準備資産の完全監査(full audits)ではなく、BDOイタリアによる証明書(attestations)を発行するにとどまっている」とのことだ。
11年前の設立以来、情報開示の不十分が指摘されてきた会社としては、対応が不十分といえないだろうか。
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...the stablecoin “has consistently maintained full resilience through banking crises, exchange failures, liquidity shocks and extreme market volatility”.
当然テザー社は反論する。
ステーブルコインは「has consistently maintained full resilience(一貫して完全な耐性を維持してきた)」とのことだが、それと正式な監査を受けないこととは関係がない。
さあ、不都合な事実に向き合うべき時が来た…!のだろうか。
さあ、不都合な事実に向き合うべき時が来た…!のだろうか。
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