【BBC要約】クレカ金利20%は「ぼったくり」か?トランプ規制案が切り込むアメリカ信用社会の歪み

Trump plan to cap credit card costs hits bank shares|BBC|2026.01.13





この記事の論点:
クレジットカード金利の新たな上限規制は家計救済への「本気」策か  
— 銀行が主張する「弱者保護と信用供給のトレードオフ」を考察


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"Please be informed that we will no longer let the American Public be 'ripped off' by Credit Card Companies."
「クレジットカード会社にアメリカ国民が『ぼったくられる(ripped off)』のを、我々はもうこれ以上許さない」

トランプ大統領はアメリカのクレジットカード問題についてこう語った。問題とは、アメリカのクレジットカード債務が過去最高を記録している件だ。

「翌月一括払い」の日本とは対照的に、米国では半数以上の利用者が毎月残高を繰り越す(リボルビング)形態で利用する。その場合、毎月の支払は最低支払額のみを払うケースが多い。

「クレジットカード債務」とは、その残高を繰り越した分のことで、形態としては立派な「借金」なので、当然利息負担が生ずる。

この金利のえげつなさを、トランプ氏は「ぼったくり」と称しているのだ。

このトランプ氏の発言。政権と共和党による人気取りのための「affordability」問題対処の一環だと言われている。今回紹介するBBCの記事は、そんな「偽善」にも期待せざるを得ない、アメリカで政治問題化しつつあるクレカ問題の闇について伝えている。

ぜひ全文を読んで欲しい。


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平均金利20%という異常:米国クレジットカード債務の実態

On Friday, Trump wrote on Truth Social that interest rates on cards should be limited to 10% for one year from 20 January.
金曜日、トランプ氏はSNSの「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、クレジットカードの金利を1月20日から1年間、10%に制限すべきだと主張した。

現在、米国のクレジットカードの平均金利は約20%だ。

20%の金利というと、日本の利息制限法における上限金利(10万円未満)と同じ水準だ。これはたまたまだろう。日本のコンシューマーローンとかは、最初に契約するとだいたい18%の金利の適用になる。


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It found that those with a balance owed more than $6,000 (£4,454) on average - which, with interest rates around 20%, translated into roughly $100 in monthly charges.
2022年時点で、米国の世帯の約半数がクレジットカードの負債を抱えている。FRBによる正式な調査の結果だ。

その調査では、負債残高がある世帯は平均で6,000ドル(約95万円)以上の負債を抱えている(owed more than $6,000)とのことだ。

この負債に金利20%を賭けると、一世帯では毎月約100ドル(約1万6千円)の金利負担が発生している計算になる。
しかも、この金額は元本ではなく「金利分」だけである。

日本でもそうだが、物価高がかなり進んだアメリカでは、平均負債残高の額も上昇しているだろう。
したがって、金利負担の額も今は1.6万円よりもっと大きいということになる。

トランプ氏の提案は、20%→10%だから、この負担を半分に使用というものだ。


トランプ氏の発表の翌日、金融村にとってバッドニュースでしかないこのニュースに対して市場は正直に反応した。

米国クレジットカード大手のアメリカン・エキスプレス、ビザ、マスターカードの株価は取引開始直後に下落。同じくクレカを発行するJPモルガン・チェースなどの米銀大手も、取引開始時に1%以上の下落を記録した。

米国の銀行協会としては当然反対だ。20%のリターンのビジネスをみすみす逃すことなどできるはずがない。

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では、金融村の人達、つまりトランプ氏によれば「ぼったくり」屋の方々の反対ロジックは何かだろうか。難しい言葉でいえば「金融包摂(financial inclusion)」だ。

すなわち、金利に上限を設けることは、人々の融資へのアクセス(to access credit)を困難にし、何百万もの家庭や小規模企業にとって「壊滅的(devastating)」な打撃になる、と主張する。

どういうことかというと、銀行やクレカ会社が他が誰も貸さないリスキーな人に貸せるためには、それなりの金利をとるのが前提、ということだ。

それができなくなると、そんなリスキーな人には貸せなくなる、というわけだ。


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金利10%上限起きるジレンマ:「弱者保護」は誰を救うか

"Most banks would respond by cutting credit limits, closing riskier accounts, and scaling back rewards programmes, because they simply couldn't cover losses at that price point."
この銀行側の主張が詭弁かどうかは、冷静に判断する必要がある。

留意すべきは、ほとんどの銀行は、半分の金利10%では「損失」をカバーできない(couldn't cover losses at that price point)ということだ。

「損失」とは、金貸しをする以上必ずついて回る「貸し倒れ」による損失だ。

銀行もクレカ会社も、一定の「貸し倒れ」がある前提で金利を設定しないといけない。すなわち、自己破産などして借金が返済されなかったぶんを、それ以外の人でカバーする。それができて初めて、弱者にも信用というものが提供できる仕組みが維持されているのだ。

専門家によると、クレカ発行の会社がとる措置は以下だという;
・与信枠の縮小(cutting credit limits)
・リスクの高い口座の閉鎖(closing riskier accounts)
・リワード(ポイント還元)プログラムの削減(scaling back rewards programmes)


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トランプ案は本気かパフォーマンスか 

"I said a year ago if Trump was serious I'd work to pass a bill to cap rates. Since then, he's done nothing but try to shut down the CFPB [Consumer Financial Protection Bureau]".
「私は1年前、トランプが本気なら金利上限法案(a bill to cap rates)の可決に協力すると言った。」

民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員はこう言って、トランプ氏の「偽善」を突く。

この議員が「偽善」という根拠は、2025年の2月にCFPB(消費者金融保護局)を閉鎖したのがまさにこのトランプ氏本人だったという事実だ。

CFPBは日本の消費者庁と金融庁を合体させたようなもので、金融商品から消費者を守るための責任ももつ。元ハーバード大の教授であったウォーレン氏は、この組織の産みの親だった。


消費者庁を潰した本人がクレカ問題に挑む。「茶番」感マシマシというわけだ。「トランプ氏はCFPBを閉鎖しようとする以外何もしていない(he's done nothing but try to shut down the CFPB)」と同議員は手厳しく批判した。

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"Begging credit card companies to play nice is a joke," 
では今回のアナウンスは、本気の改革なのか、それとも政治的パフォーマンスか。

「クレジットカード会社に『行儀よくしろ』と乞うのは冗談にもならない」と
ウォーレン議員は言う。おそらくだが、金融村による「金利10%になったらそもそも借りられない人が増える」という主張は、「脅し」ととるべきなのかもしれない。

そもそも、日本には総量規制(年収の1/3を超える貸付禁止)という過剰債務を防ぐ仕組みがあるが、こうした厳格な総量規制がないアメリカでは、カード会社は高限度額を設定しやすいという事情がある。

貧しい人は構造的に搾取され続けるアメリカ。そういう人が共和党のトランプ支持層だった。他方で「持てる」者は、その優位は脅しを使ってでも譲らない。そんな構造に蟻の穴でも空くのであれば、パフォーマンスでもどんどんやれ、というのが普通のアメリカ人の思うところだろうか…


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