無い袖振るのは政治家のサガ|CNN|サクッと読める英文ビジネスニュース

Trump floats $2,000 tariff rebate checks. What you need to know|CNN|2025.11.11



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“People that are against Tariffs are FOOLS!” 
“A dividend of at least $2000 a person (not including high income people!) will be paid to everyone.”
「関税に反対する人間はアホだ!少なくとも2,000ドル(約30万円)の配当が全員に支払われるのだから(高所得者は除くけど)」

日曜日のトランプ大統領のポストだ。

日本では幻となった現金給付。その
額は国民一人あたり2万円(子どもや住民税非課税世帯は4万円)だった。アメリカはその15倍の還元だ。

物価高が日本の比じゃないとはいえ、トランプさんは果たして本気なんだろうか? 

そんなアメリカ人の疑問について今回のCNN記事が伝えている。

興味深いのでぜひ全文を読んで欲しい



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|受け取れよ「配当」!

“We’re taking in so much money that we may very well make a dividend to the people of America,” Trump said at the time. 
While American importers foot the initial tariff bill, they’ve been passing along some of those added costs to consumers, meaning Americans are indirectly paying for tariffs, too.
まず、何で「配当」が払われるのか整理しよう。

関税はそもそも米国の輸入業者が最初に負担するのだが、その追加コストの一部は消費者に転嫁されている。

結果的に米国民も間接的に関税を負担していることになる。

したがって、「莫大な収入を得ている(We’re taking in so much money)」国としては、その株主?たるアメリカ国民に「還元」できる、というわけだ。


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Trump suggested that these tariff rebate checks could be funded not by a general pool of taxpayer funds but instead from the money collected by US importers who pay the historic tariffs Trump has imposed on a vast number of goods from overseas.
国民が払った分の「還元」なら最初から関税なんてやるなよ、という潜在的批判は当然あるだろう。

その批判に対してトランプ氏は、還元の財源は「一般の税金(a general pool of taxpayer funds)」ではなく、飽くまで「輸入業者が支払う関税収入(from the money collected by US importers)」だ、と説明する

いや、だから転嫁されてるんでしょ、ということなのだが、こういう形式論で済ませようとしているところを見ても、果たして「還元」なのか甚だ怪しい。


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|危うい「計算」

The Trump administration has collected more than $220 billion in tariff revenue, which includes a mix of various tariffs Trump has imposed and previous tariffs that were in place before Trump took office, according to the US Treasury. 
So a back-of-the-envelope calculation would put $2,000 stimulus checks at a total cost of about $326 billion. That’s more than the tariff revenue America has collected since Trump’s second term began.
トランプ政権はこれまでに2,200億ドル以上の関税収入を集めたそうだ。

この2,200億ドルという数字を覚えつつ、確定申告をしたアメリカ国民の1.6億人に一人2,000ドルを給付する総額を単純計算(back-of-the-envelope calculation)してみる。

合計は約3,260億ドル。国庫にとってはネットでマイナスだ。

今回の案は「還元」はおろか、赤字覚悟の出血大サービスになっているだということは小学生でも分かるだろう。

それもあってか、財務長官のベッセント氏は「正式な提案はまだない」とコミットしていなかったりする(noncommittal about the proposal)。


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|危うい「前提」、危うい「期待」

Another complicating factor: The Supreme Court appears skeptical of the Trump administration’s use of emergency powers to impose tariffs. About $100 billion of the total tariff revenue so far has been collected through this method.
実は「莫大な収入」の存在自体も危うい。

というのも、トランプ関税はその合法性についてまさに米最高裁で審議されているところだからだ。なお、下級審ではトランプ関税は違法と判断済みだ。

先日の最高裁で行われた口頭弁論。最高裁の判事(保守派を含む)の多くが、トランプ政権の主張に懐疑的な質問をした(The Supreme Court appears skeptical)。

おそらく、トランプさんの「(経済的メリットがあるのに)関税に反対する人間はアホ」発言は、この旗色の悪い司法判断の行方を気にしてのコメントだろう。

この最高裁の判決、年内にも出る見通しなのだが、もし違法と判断された場合、徴収済みの関税(数千億ドル規模)を企業に返還する必要が生じるそうだ。

日本でもずっと指摘されていることだが、還付金は物価上昇を悪化させる可能性がある。目先の減税だってそうだろう。インフレが国民の最大の懸念となっている今、国民に金を渡せば、経済は余計に「砂糖による興奮状態(a sugar rush)」になるかもしれない。

そうなった場合、FRBは物価上昇を押さえるために金利を引き上げる。金利が上がると家計にはさらに打撃、ということで、総合すると今回の「還元」は全くの逆効果になるかもしれないのだ。

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|Can Trump do this unilaterally?ーAlmost certainly not.
|トランプ氏は単独で実行できるのか?-ほぼ不可能です。

淡い期待にはしっかり釘をさす。CNNの潔さのおかげで世界はまた冷静になれるか。

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