終末の「暗号資産トレジャリー」|Financial Times|サクッと読める英文ビジネスニュース

Shares in bitcoin hoarders sink as ‘crypto treasury’ mania sours|FINANCIAL TIMES|2025.09.10



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“If you get to that danger zone it’s going to be potentially very difficult to rebound from it,”
「危険ゾーンに入ると、そこからの回復は非常に困難」
だそうだ。

何がそうかというと、‘crypto treasury’と言われる、企業として暗号資産を財務資産として保有・運用するビジネスのことだ。

何でそのビジネスが「危険ゾーン」かというと、9月10日付のFT記事が報じているように、これら‘crypto treasury’企業の価値は、それらが保有している暗号資産の価値以下に下落している状況になっているからだ。

ぜひ全文を読んでほしい。
ラブブ人形と対して変わらない。

この
‘crypto treasury’戦略は、株式発行や債務調達によって暗号資産を購入し、それが株価上昇につながることを期待するというものだ。

昨年、このモデルの元祖である「ストラテジー」社の株価が、約60ドルから500ドル超まで急騰した。2024年において、同社の株価はビットコインの価格上昇率を上回ったのだ。

この成功?を見た企業が、自社の企業価値、要は自社の株価をブーストさせようと(in an effort to boost their company valuations)この手法を模倣し始めた。中には本業を脇に置いて暗号資産購入に注力する企業も現れた。

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The shares of Japanese hotelier-turned-bitcoin hoarder Metaplanet, Asia’s biggest bitcoin holder, have dropped 68 per cent from their peak in mid-June, while those of Smarter Web Company, the UK’s biggest bitcoin buyer, are down 70 per cent over the same period.
Shares in bitcoin-hoarding companies have tumbled in recent weeks as investors grow increasingly concerned about an overcrowded market, in the first major setback for the “crypto treasury” craze that has swept financial markets this summer.

その「本業を脇に置いた」企業の代表が日本の「メタプラネット」社だ。東証スタンダード市場の上場会社で、同社は元々ホテル業者(hotelier-turned-bitcoin hoarder)だ。同社は今やアジア最大のビットコイン保有企業だったりするのだが、同社の株価は6月中旬のピークから68%下落している。

メタプラネット社は今年の6月、ビットコイン総供給量の1%に相当する21万BTCを2027年までに保有することを目指す方針を掲げたところだった


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同社に限らず、‘crypto treasury’手法を模倣した企業群の株価は軒並み下落している。

何が起こったかというと、‘crypto treasury’企業があまりにも多すぎるとの懸念が投資家の間で、高まっているからだ。この夏に金融市場を席巻したブームは、初の大きな逆風に直面しているる。

‘crypto treasury’企業の元祖、世界最大の企業ビットコイン保有者である「ストラテジー」社はというと、株価は過去1か月で18%下落し、4月以来の安値を記録した。

いわば「祭りの終わり」のようだ。ちなみに、暗号資産自体、例えばビットコインの価値は、この1年間(2024年9月〜2025年9月)で約35%上昇している。


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|危険ゾーン

Following the recent declines, however, some are now trading below the value of the crypto they hold, in a worrying sign for a strategy that relies on an upward spiral of token and share prices.
それで、なぜ「祭りの終わり」が「危険ゾーン」にまで至っているかというと、

‘crypto treasury’企業の中には、それらの株価が保有する暗号資産の価値を下回る水準で取引されるようになっているものもあるからだ。つまり、投資家にとっては、わざわざその企業を介して暗号資産に投資する経済的な意義は全くないのだ

つまり、この‘crypto treasury’のビジネスモデル自体がオワコン化しつつあるようだ。


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If a company’s shares fell so much that it becomes valued less than the tokens it holds, it enters “a danger zone”, Benoist said. Some companies have already reached this stage.
もっとも、メタプラネット社に関しては、いまのところ時価総額(約4,467億円)が保有するビットコインの価値(BTC保有量:20,136 BTC、約3,046億円)を上回っているようだ。

日本の場合、実は現在の税制がその背景にあったりする。即ち、株式を通じて間接的に BTC に投資することには税制上のメリットがあるのだ。

日本では個人が BTC を直接売買して得た利益は「雑所得」として課税され、その場合の税率は最大で 55 %だ。ところが、同じBTCをメタプラネット社の株を通して持って入れば、金融商品たる株式のキャピタルゲインへの課税なので税率は約 20 %で済む。

もっとも、これを変えようとして、暗号資産を株のように金融商品扱いにし、税率も20%にしようと動いているのが金融庁だったりする。

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ただし、FT記事でも紹介している「mNAV(時価総額 ÷ BTC純資産価値)」の水準でみると、メタ社のmNAVは今年6月の5.6倍から9月の1.1倍まで急激に低下している。他方アメリカでは、現に1倍を割った例として、米国上場のビットコイン採掘企業や医療技術会社があると本記事は伝えている。

これらの企業は、経済的な存在意義を終えたということだ。

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オワコンとはいえ、
‘crypto treasury’ビジネスの絶滅までにはまだかかりそうだ。記事が伝えているところでは、大手‘crypto treasury’企業が小規模企業を買収しており、それらが持つトークンを割安で取得する動きが出る可能性も指摘されている。

どこまでも商魂逞しい方々こと。だからこんなビジネスをやるんだろうが。。

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