パウエル議長「未来が分かれば苦労せんし」|CNN|サクッと読める英文ビジネスニュース


今週9カ月ぶりに政策金利の引下げを決めた、FRBパウエル議長のコメントだ。

利下げをずっと求めていたトランプ政権。FRBもついに屈したか、と見えたかもしれないが、やっぱりパウエル議長は冷静な分析に基づいて自らの「仕事」をしている。
9月18日付のCNN記事は、そんなFRBの決定の背景にある微妙な経済状況について丁寧に伝えている。

ぜひ全文を読んでほしい。

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|「リスク管理」が必要なとき

今回の利下げは9か月ぶり。トランプ大統領の第二期目に入っては初めての利下げだ。基準金利は0.25ポイント引き下げられ、新たな金利レンジは4.00-4.25%となった。

二期目の就任直後からトランプ大統領より利下げを強く求められる中、FRBに9か月間の「沈黙」があったのは、利下げを求める超本人が起こしている「不確実性」のせいに他ならない。

ここで「不確実性」というのは、言わずもがな、トランプ関税政策のせいで物価が押し上がるリスクの存在をいう。

実際、米労働省が11日に発表した8月の消費者物価指数は、前年同月比で2.9%の上昇となった。7か月ぶりの高い水準だ。

評価は分かれる。トランプ関税による影響がじわじわと広がっているという見方もあれば、影響はまだ抑えられているとする意見の両方がある。因みに、日本の8月分のコアCPI(生鮮食品除く)は前年比2.7%の上昇で、日本銀行の目標(2%)を41か月連続で上回っている。

すなわち、物価をコントロールするためにいつ利上げか?と見られている日本と同じようなインフレ状態にあるのが今のアメリカだ。安易に利下げできる状況ではないということが分かるだろう。

今回の利下げを「リスク管理のための利下げ」(“risk management cut”)とパウエル議長は表現した。何が言いたいかというと、物価的には微妙な状態ではあるのだが、FRBとしては、トランプ政策の経済への影響が明確になるまで無期限に待つわけにはいかない、ということなのだ。

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|二つの使命が、絶妙な判断を求める


アメリカの中央銀行は『物価の安定』と『最大限の雇用』という二つの使命がある(ちなみに、日銀は前者しか負っていない)。

アメリカの「雇用」に下方リスク(downside risk)が認められた以上、FRBとしてはアクションを取らざるを得なかった。パウエル議長は今回、労働市場のリスクが利下げの主な理由であることを明確にした。

米労働統計局は先週、2025年3月までの1年間の雇用増加の推計を91万1,000人分下方修正し、雇用の伸び鈍化が2024年に始まっていたことを示した。パウエルによれば今は「採用解雇も少ない状態」(“low hiring and low firing.”)だそうだが、いったん解雇が始まれば、雇用情勢は一気に悪化する恐れがある。


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“But let’s remember there’s a 4.3% unemployment rate and the economy is growing at 1.5%, so it’s not a bad economy.”

もっとも、かといって経済状況が悲観的かというと、そうではない。

「失業率は4.3%で、経済成長率は1.5%ですから、決して悪い経済状況ではないが」と本人が言っている通り、利下げで景気を支える状況でもないわけだ。

だから本記事のタイトルである「If you’re confused about what’s next for the US economy, so is the Fed(アメリカ経済の行方がよく分からないのはFedも同様)」は、この状況を的確に表現している。
米国経済の行方に戸惑っているのは、一般人だけではなくFRBも同じなのだ。


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“We have to live life looking through the windshield rather than the rearview mirror,” Powell said.
「人生はバックミラーではなく、フロントガラスを見ながら進まなければならない」

過去のデータにとらわれず、現在の状況と将来のリスクに基づいて政策判断を下す必要があるという強いメッセージ。

経済の先行きが不透明な中ならなおさらということだろうか。雑音に惑わされない中銀マンの心意気か。

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