EUの対ロシア秘策は自爆覚悟?|BBC|サクッと読める英文ビジネスニュース
Belgium urges Europe to drop plan for frozen Russian assets to aid Ukraine|BBC|2025.12.03
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"It would mean bankruptcy for Belgium."「それはベルギーの破産を意味する」
ベルギーの外務大臣マキシム・プレヴォ氏のコメントだ。
いまEUでは、ウクライナへの追加支援の方法について、加盟国の国家破産の可能性が持ち出されるような議論が続いている。
今回紹介するBBCの記事は、このことについて伝えている。
ぜひ全文を読んで欲しい。
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「ロシアが我々を訴えれば勝つ可能性は非常に高い。ベルギーは(連邦予算1年分に相当する)2000億ユーロなんて返済できない」と。
議論になっているのは、ウクライナの戦費支援の財源をどう工面するかについてだ。
その工面の方法について今検討されている案は、ロシアとの関係でかなり危うい法的リスクを負っている。
その点をベルギーは指摘しているのだ。
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The EU's proposal, which has been championed by the German Chancellor, Friedrich Merz, would see €140bn (£123bn) of Russian state assets held in Belgium transformed into a "reparations loan" to support Kyiv financially next year.では、その危うい提案は何かというと、
「賠償ローン(reparations loan)」というものだ。ドイツのメルツ首相が推進している案だ。
案の内容は、ベルギーに保管されているロシアの国家資産をこの「賠償ローン(reparations loan)」に転換し、来年のウクライナへの財政支援に充てるというものだ。現在、EUの制裁によって、最大2,100億ユーロにのぼるとされるロシア資産は凍結されている。
「賠償ローン」に転換するとは、EUはその凍結したロシア資産を現金化して、ウクライナへのローンとして資金提供することを指す。
このローンの返済、ロシアが賠償金(reparation)を支払うまで不要となっている。つまりウクライナはロシアからの賠償金でEUに弁済することになっている。「賠償ローン」と言われる所以だ。
簡単にいうと、ロシアにとっては自らの貯えから敵に融資をするようなもので、おまけにその融資の保証まで自分がやっているようなものだ。
戦場の例で考えると、自分が買ってやった軍事ドローンで自分が攻撃されるようなものだろうか。
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|そう上手くはいかない事情
EU countries have already used profits generated from around €210bn of frozen Russian assets to fund Ukraine's ongoing defence following the full-scale invasion in February 2022.実は、凍結されたロシア資産約2100億ユーロについては、その元本ではなく利子などの運用益(profits generated)が、既にウクライナの防衛資金に充てられている。
But using the assets themselves has proved far more controversial.
これを決める時も、元本である資産そのものを充てるべきとの議論はあったが、今回のような議論があり、EUが使うのは「運用益」だけとなった経緯がある。
ところが今回は資産そのものを使うことに踏み込んでおり、遥かに大きな物議を醸している(has proved far more controversial)というわけだ。
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なぜベルギーが?というと、EUが凍結した資産の大部分(1850億ユーロ)が、ベルギー首都ブリュッセルに保管されているためだ。
ロシアの資産とは国債などの金融資産なのだが、ブリュッセルに拠点を置くユーロクリアという証券決済機関に保管されていることになっている。
記事の中でベルギーのリスクとして説明しているのは、例えば戦争が終わってロシアの資産凍結の制裁が解除された場合、さらには、和平合意しても賠償(賠償ローンの返済原資である)が決まらない場合などだ。
その時点でユーロクリアが資金を持っていなければ、ベルギーが肩代わりしなければならない。
ベルギーとしては、EU全体としての措置で自分だけが返済義務を負うことなることを懸念しているのだ。
ベルギーとしては、EU全体としての措置で自分だけが返済義務を負うことなることを懸念しているのだ。
EUも結局は主権国家の「連合」だ。連合の枠組みに全幅の信頼を預けるのを期待するのは無謀ということだろう。
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|「やってみろ」シア
Russia has promised to retaliate if the European Union uses frozen Russian sovereign assets for a loan to Ukraine.この案に対してロシアは敵意を隠さない。
One of its most prominent bankers, Andrei Kostin, said Moscow would unleash half a century of litigation, should the plan be agreed by the EU.
EUが凍結されたロシアの国家資産をウクライナへの融資に使えば報復する(retaliate)と約束し、「この計画がEUで合意されれば、モスクワは半世紀にわたる訴訟(half a century of litigation)を起こす」とロシアの著名銀行家が述べたそうだ。
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そんなこともあり、ベルギーは他の加盟国にリスクの共有を求めている。
こうしてロシア・ウクライナ問題は、いつのまにかEU内政治の問題になりつつある。
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こうしてロシア・ウクライナ問題は、いつのまにかEU内政治の問題になりつつある。
