バブルは続くよどこまでも|Financial Times|サクッと読める英文ビジネスニュース
US stocks slide as investors fret over high valuations for AI companies|Financial Times|2025.11.05
Asian markets’ reliance on AI boom raises ‘bubble’ fears|Financial Times|2025.11.04
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“What is in the US is not staying in the US,” said Frank Benzimra, head of Asia equity strategy at Société Générale.「米国で起きていることは米国にとどまらない」
“If you assume you have a bubble in the US then you have one in Asia.”
「米国にバブルがあると仮定すれば、アジアにもあるということだ。」
フランス系の銀行のアジア株ストラテジストのコメントだ。
先週始めの株安はまさにそれだった。今回紹介するFT記事は、AI絡みで起きたアメリカでの出来事と、飛び火したアジア市場の構造について伝えている。
興味深いのでぜひ全文を読んで欲しい。
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|警告する「巨人」、火曜の株安
US stocks dropped on Tuesday as jitters over highly elevated valuations for many artificial intelligence companies intensified and top Wall Street executives said markets were vulnerable to a pullback.先週火曜日のアメリカ株式市場。
主な指数はそろって下落した。S&P500は1.2%安で取引を終え、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は2%下落した。
この背景には、AI関連企業に対する高すぎる評価への懸念の強まりがある。
何を今さら…ではあるのだが、今回は、ゴールドマンやモルガン・スタンレーといったウォール街のトップ銀行の幹部が、市場は調整局面(markets were vulnerable to a pullback)だと発言したことが騒ぎに繋がった。
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“When you have these cycles, things can run for a period of time. But there are things that will change sentiment and will create drawdowns, or change the perspective on the growth trajectory, and none of us are smart enough to see them until they actually occur.”「下落(drawdowns)を引き起こす要因は、実際に起こるまで誰にも予測できない(none of us are smart enough to see them)」
ゴールドマンのCEOの香港の会議でのコメントで、火曜日の株価下落の背景となったものの一つだ。
「the cycles」とは半導体やAI関連の景気がうまく回っていることを指す。さらにその景気サイクルについて、いつまでもは続かないことを示唆した。
調整局面は起こるまで誰も分からない、というのは言い得て妙だ。どうせあんたは薄々は分かってるのでは…と指摘したいところではあるが。
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|「ビッグ・ショート」が動いた
Peter Thiel’s defence group Palantir, which boasts the highest valuation relative to its profits of any S&P 500 company, was at one point the market’s worst performer, down as much as 10 per cent before paring some losses.
中でも最も下がった(the market’s worst performer)のが、ソフトウェア企業のパランティア(Palantir)だ。
同社の株は一時10%安となったのだが、そのきっかけになったのは、著名投資家のマイケル・バリー氏が率いるファンドが、同社に対する大規模なプットオプションの取得を開示したことだった。
プットオプションとは簡単にいうと、株が下落するほうに賭けるという意味だが、バリー氏がベットする規模は、パランティア社株の約 500万株分にあたる、名目価値にして$912百万(約1,400億円)というものだ。
プットオプションとは簡単にいうと、株が下落するほうに賭けるという意味だが、バリー氏がベットする規模は、パランティア社株の約 500万株分にあたる、名目価値にして$912百万(約1,400億円)というものだ。
このバリー氏。2008年 サブプライム危機を予測した人で、その時も同じく空売りで爆益を上げ、その成功は『ビッグ・ショート(The Big Short)』として映画化された。
もともとパランティア株価は過剰評価と言われていた。株価は年初来175%超も急騰しており、利益対比の株価(PER)は 250倍超で、S&P500企業の中で最も「課題評価」されていると言われていたのだが、ついに伝説の男が行動で示したのだ。
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|アジアも道連れ?
Six tech companies expected to benefit from the AI boom — including ecommerce group Alibaba, smartphone maker Xiaomi and video sharing app Kuaishou — account for 50 per cent of the returns of Hong Kong’s Hang Seng this year, according to Financial Times calculations.
目をアジアに移そう。
AIブームの恩恵を受けてきたのはアジアの株式市場も一緒だ。特徴は、AI関連のテクノロジー企業が、それぞれの国のインデックスのかなりの部分を占めているという現実だ。
ここで引用した香港の場合、AI関連のテクノロジー企業6社(EC大手アリババや、スマートフォンメーカーのシャオミなど)が、香港ハンセン指数の今年のリターンの50%を占めている(account for 50 per cent of the returns)とのことだ。
同じく、韓国では2銘柄が指数のリターンの40%、台湾では半導体メーカーTSMCが年初来の上昇分の半分以上を占めている。記事に日本についての言及はない。
ちなみに本家の米国では、いわゆる「マグニフィセント・セブン」テクノロジー株が、2025年の第1~第3四半期のS&P500指数のリターンのうち42%を占めたと言われている。
言うならば、全世界の市場が「AI推し」なのが今日なのだ。それで、冒頭の「米国にバブルがあると仮定すれば、アジアにもあるということだ。」に繋がる。
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“we should also welcome the possibility that there would be drawdowns, 10 per cent to 15 per cent drawdowns that are not driven by some sort of macro cliff effect”.「10~15%の下落が起きる可能性を受容すべきだ」モルガン・スタンレーのCEOがゴールドマンCEOと同じ会議の中で発したコメントだ。
株価は翌日には反発。これらのコメントが「I told you so(だから言ったでしょ)」として思い出されるのは、果たしていつ頃か…?
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