ついに塞がるか?インドの「ループホール」|Financial Times|サクッと読める英文ビジネスニュース

Trump’s Russian oil sanctions hit India and China’s imports|Financial Times|2025.10.24




* * *

One person familiar with the discussions added that Reliance was unlikely to “take a chance” that could result in punishment by the US, after sanctions were announced on Wednesday night.
インドのリライアンス。

アジアで最も裕福な人物であるムケシュ・アンバニ氏が率いるインド最大級のコングロマリット企業だ。同社は世界最大規模の製油所も有している。

このリライアンス、「冒険はしないだろう(unlikely to “take a chance”)」というのが関係者の読みだ。何が「冒険」かとういうと、アメリカから制裁を受けるリスクをとってまでロシア産原油を輸入するか、についてだ。

今回発表されたアメリカによる対ロシア制裁、これまで「抜け穴(loophole)」とされたものをようやく解決するかもしれない。
同社は昨年12月、ロシア最大の国営石油会社であるロスネフチ(Rosneft)から、1日あたり約50万バレルの原油を購入する内容で10年間の契約を結んでいた。

アメリカは2022年にロシア産原油の輸入を全面的に禁止している。EUもそうだ。

ただし、EUの制裁では、第三国で精製された石油製品は対象外となっている。そう、第三国のインドから輸入すればよかった。この雑な制裁の隙間を埋め、ロシア産原油の恩恵を最大限に受けていたのがインドだ。

ところが、そのロスネフチ。今月発表されたアメリカによる最新のロシア制裁の対象となった。

同社に限らず、ロシア最大の民間石油会社のルクオイル(Lukoil)なんかも制裁対象となった。ここでの「制裁」とは具体的には、これらの会社の米国内の資産が凍結されたり、米企業との取引も禁止されたりすることを意味する。

これに対するリライアンスの反応が、上にあるコメント「政府の指針に従って輸入を再調整する(“recalibrate”)」というものだ。

ついにインドもロシア産原油の輸入抑制を検討せざるを得なくなったのだ。今回の米国の制裁強化を受け、ようやくプーチン大統領の戦争資金源が断たれる可能性が現実味を帯びてきたのだ。


* * *


Trump has previously fiercely attacked New Delhi for snapping up Russian oil, imposing steep sanctions in an attempt to dissuade it from funnelling money to Moscow. 
China and India together account for about 80 per cent of all Russia’s crude exports, with oil and gas contributing about a quarter of Moscow’s federal budget.

トランプ氏は以前より、ロシア産原油を購入するインドを厳しく批判していた。

というのも、インド的には美味しすぎた。というか、節操がなかった。中国とインドは、ロシアの原油輸出の約80%を占めていた。それで、石油・天然ガスはロシアの連邦予算の約4分の1を支えている。

つまい、インドと中国は間接的にロシアに加担していたことにある。もっとも、インドなどを迂回してロシア産原油を輸入しているEUも、同じことなのだが…

戦争行動は補給を絶たねば終わらない。アメリカとしても、モスクワへの資金流入を阻止するために厳しい制裁が必要だった。

戦費の1/4を絶つことで終わってくれるのならさっさとすべきだ。何もトランプさんの政策が全て滅茶苦茶ということはないのだ。


* * *

|何がそんなに効くのか…答えは「二次制裁」

But the latest US sanctions mean that companies buying Russian oil risk losing access to the dollar-based financial system. 
The measures unveiled on Wednesday specify that “participating foreign financial institutions” could be subject to secondary sanctions for doing business with Lukoil and Rosneft.
This means that companies such as Reliance, which has global operations, may struggle to secure financing from US banks if they continue to purchase Russian oil directly.
とはいえ、今回の制裁がなぜインドを動かしたかというと、インドなど第三国企業に対する「二次制裁(secondary sanctions)」があるからだ。FTは簡潔に解説してくれる。

「二次制裁」のターゲットは、リライアンス自体というよりも、同社に「関与する外国金融機関(“participating foreign financial institutions”)」だ。

これらの金融機関は、ロスネフチやルクオイルとの取引に「関与」することにより、制裁の対象となる可能性があるというのが今回の措置だ。

どういうことかというと、米国の銀行は、制裁が嫌であれば、リライアンスのような企業と「関与」するべきではない、ということだ。

つまり、ロシア産原油を直接購入し続けると、米国の銀行から資金調達ができなくなったりドル決済ができなくなったりする。

大げさな表現でいうと、リライアンスのようなグローバル展開する企業が、ドル建て金融システムへのアクセスを失う(losing access to the dollar-based financial system)ことだ。地球規模でドル建ての借入や支払・決済を常に行っているようなグローバル企業にとっては、どんなに健康体でも急に呼吸をさせて貰えなくなるような状況になる。


* * *

一連の公表を受け、原油価格は5%以上上昇した。

ロシアからインド・中国への原油輸出が滞る可能性が出てきたため、世界の原油供給量が減る懸念が生じためだ。

この上昇、インドの「検討」が現実の輸入停止につながらなければ、単純にロシアのgainとなるのだが…

*****
人気ブログランキングでフォロー

人気の投稿