アメリカの住宅市場は機能不全…それでも楽観できる理由とは?|Financial Times|2025.07.25
Where do US house prices go from here?|Financial Times|2025.07.25
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ハワイのホノルル。市内の住宅価格の中央値は、住民の所得の中央値の10倍を超えるそうだ。カリフォルニア州に至っては、サンノゼが12倍超、ロサンゼルスは11倍超となっており、これらの街では住宅は「impossibly unaffordable(買えないぐらい高い)」と言われている
7月25日付のFTコラムでは、そんなアメリカの住宅価格の動きと今後の見通しについて興味深い分析を伝えている。
ぜひ全文を読んでほしい。
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|機能しない?住宅市場
住宅購入が夢を超え「不可能」なくらい過熱していると思いきや、本記事が伝えるところでは、アメリカの住宅市場は寧ろ悪化している(the US housing market is…getting worse.)というのだ。具体的には、住宅の取引数で見た場合、ここ17年で最も少ないでペースで推移しているらしい。つまり、アメリカでは住宅は売れていない。
住宅が売れないということは、住宅の「在庫」が増える。アメリカの数え方だと「何ヶ月分」の在庫があるという数え方をするらしく(日本の「回転期間」に近い概念か)、最新の数字だと、4.7ヶ月分の供給相当の住宅が余っているとのことだ。
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何が起こっているのか。まず、本記事が紹介する専門家によれば、上昇を続ける住宅価格を前に、購入希望者は今自分が所有する住宅が果たして売れるのかどうか不安になっているらしい。
そんな不安な売主は、売った後の心配、つまり買い替えを躊躇する。アメリカの住宅市場は一般的に中古物件というが、わざわざ金利の高いローンを新たに負ってまで買い替えをしようとは思っていないようだ。
需要と供給の関係を考えると、供給過剰であれば当然にしてその財の価格は下がる。
ところが、アメリカの住宅価格に関しては、さきほどのホノルルの例のように、逆に上昇を続けている(remain elevated)というのだ。このことをもって当記事は「マーケットは適切に機能していない(the market isn’t working properly)」としている。
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|住宅市場の今後の行方は?
高止まりする住宅価格のバブルは崩壊するのか?
本記事は、寧ろ楽観的な見方をしている。なぜだろうか?
一つには、日本と違ってアメリカでは、今後金利が動くとしたら下がる方向だからだ。金融市場は本年中に1回、来年には少なくとも3回の中銀利下げを織り込んでいる。
政策金利に連動して住宅ローン金利も下がる、そうすると比較的借りやすくなった住宅ローンを背景として、住宅市場は回復する(即ち価格は下がらない)と見ているのだ。
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Thankfully, a crisis is not in the offing. “Forty per cent of homeowners in the US are mortgage-free, and those that do have mortgages are locked in at ultra-low pandemic rates, with manageable debt servicing costs,” said Ludtka.
もう一つは、アメリカの住宅所有者の40%は無借金で、借金をしている層も、昔の低金利、すなわちコロナ時の超低金利で自分の返済を固定しているということだ。
ここが、当面の金利の低さにつられて変動ローンを借りるのが一般的な日本と対照的な点ではないだろうか。アメリカ人は比較的に金利上昇には耐性がある。
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そのような状況で、トランプ大統領は金利の引き下げを求めている。耐性のあるアメリカ人にとっては、よりローンを組みやすい状況が待っている。総合すると、アメリカの住宅価格はまだ上がりそう…ということだろうか。
果たしてその通りになるか‥?
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