AIチップ輸出に立ちはだかる新たな壁 ｜Financial Times｜サクッと読める英文ビジネスニュース
China turns against Nvidia’s AI chip after ‘insulting’ Howard Lutnick remarks｜Financial Times｜2025.08.25
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“We don’t sell them our best stuff, not our second-best stuff, not even our third-best,” Lutnick told CNBC on July 15, the day after the Trump administration lifted export controls, implemented in April, on H20 sales.「私たちは彼らに最高のものは売らない。二番目に良いものも、三番目に良いものさえも売らない。彼らをアメリカの技術スタックに“依存”させるのが目的だ。」
“You want to sell the Chinese enough that their developers get addicted to the American technology stack, that’s the thinking,” he added.
日米関税交渉の中で赤沢大臣に「ラトちゃん」と呼ばれたラトニック米商務長官の発言だ。政治家が失言するのは世界共通らしい。8月21日付のFT記事は、そんなラトちゃんの失言にキレた中国当局の対抗措置について伝えている。
ぜひ全文を読んでほしい。
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｜「三番目に良いもの」ですらないAIチップ
ここで言っている「彼ら」は中国、「もの」はAIチップのことで、「三番目に良いもの」ですらないといわれているのは、米国の対中輸出規制に対応するために特別に設計された中国市場向けのAIチップ、NVIDIAの「H20」のことだ。米国政府は2022年以降、NVIDIAの高性能GPU（A100、H100など）の中国向け輸出を禁止している。先日、トランプ政権は条件付きでH20の中国向け輸出を容認した。その条件は「販売収益の15％を米政府に納付すること」で、日経などでは「上納金」と言われている。
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Some of China’s senior leaders found the comments “insulting”, leading the policymakers to seek ways to restrict Chinese tech groups from buying the processors, according to two people with knowledge of the latest regulatory decision-making.
As a result, Chinese tech groups held off or significantly downsized their H20 orders, according to those with knowledge of their plans.
口は災いの門。当然中国は反応した。
ラト氏のコメントは「侮辱（insulting）」であるとして、中国の規制当局（中国国家インターネット情報弁公室など）は数日内に、アリババ、バイトダンス、百度といった主要テック企業に対して、NvidiaのH20チップの購入を停止するよう非公式に指示した。中国当局は自国のテック企業にNVIDIAからの調達を控えるよう指導し始めた。三流品しか売らない、というのも随分失礼ではあるが、特に「依存（addicted）」という言葉が、中国ではアヘン戦争を連想させる非常に敏感な表現と受け取られたようだ。
指導された中国テック企業はそれに従い、H20の注文を延期、若しくは著しく縮小したとのことだ。当然アジアではこうにしかならない。
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｜皮肉過ぎるタイミング
The moves have come as a blow to Nvidia, whose chief executive Jensen Huang last month visited Beijing and committed to staying competitive in the country. The US bans Nvidia, the world’s dominant supplier of AI chips, from selling its most powerful processors in China.
Following Huang’s warmly received trip, Nvidia received enough interest from Chinese clients for it to tell chipmaking partner TSMC to reopen its H20 production lines, according to two people with knowledge of the matter.この失言とそれに続く中国の対抗措置は、最高性能のチップを中国に売ることが禁じられているエヌビディアにとっては、またも政治に足を引っ張られた格好だ。
というのも、同社のトップであるジェンスン・フアン氏は先日中国を訪れ、引き続き当地にコミットすることを表明したばっかりだったからだ。
同氏は、2025年に複数回中国を訪問し、中国政府・企業の他、AIスタートアップ「DeepSeek」の創業者とも会談し、中国向けの新しいチップ設計について協議していた。ファン氏自身、「中国はNVIDIAにとって非常に重要な市場」と明言したほどだ。中国のクライアントはH20の生産ライン再開について関心を示すなど、フアンCEOの訪中は奏功しかかっていた。
中国当局は国内テック企業に国産AIチップの利用を呼び掛けていたが、アリババやバイトダンス（Tiktok）はそれに抵抗しようとしていた。ベストのものではないとしても、エヌビディアのチップがなければ、アメリカとの技術競争には勝ち目がないという理由だ。
つまり、このラトニック氏の「失言」の件がなければエヌビディアにとっては良い流れになっていた。「失言」は中国当局にとって国産チップ促進のためのさらなる後押し（one more reason to intensify its efforts to push tech firms to use China’s own chips）となった格好だ。
同氏は、2025年に複数回中国を訪問し、中国政府・企業の他、AIスタートアップ「DeepSeek」の創業者とも会談し、中国向けの新しいチップ設計について協議していた。ファン氏自身、「中国はNVIDIAにとって非常に重要な市場」と明言したほどだ。中国のクライアントはH20の生産ライン再開について関心を示すなど、フアンCEOの訪中は奏功しかかっていた。
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Chinese regulators have urged more use of domestic chips in recent years, but tech giants from Alibaba to ByteDance argued that their AI development would be impaired without Nvidia’s chips, hurting China’s chance to win a technology arms race with the US.
“Lutnick’s speech gives the coalition [of regulators] one more reason to intensify its efforts to push tech firms to use China’s own chips,” said a person close to the policymakers.
中国当局は国内テック企業に国産AIチップの利用を呼び掛けていたが、アリババやバイトダンス（Tiktok）はそれに抵抗しようとしていた。ベストのものではないとしても、エヌビディアのチップがなければ、アメリカとの技術競争には勝ち目がないという理由だ。
つまり、このラトニック氏の「失言」の件がなければエヌビディアにとっては良い流れになっていた。「失言」は中国当局にとって国産チップ促進のためのさらなる後押し（one more reason to intensify its efforts to push tech firms to use China’s own chips）となった格好だ。
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｜中国側は意外に冷静
Some Beijing policymakers are pushing to ban foreign chips altogether for inference, which accounts for most AI demand, according to a person recently summoned for a meeting with them.
That is unlikely to happen soon due to a shortage of domestic chip supplies, which Beijing hopes to address next year when several advanced production lines are due to launch.
中国の政治家の中には海外製のチップを禁止すべきと主張している者もいるそうだ。実際、アリババなどの抵抗のよそで、中国の企業も「AI推論」に関しては国産チップへのスイッチをだんだんと許容しつつあるとのことだ。「AI推論」はDeepSeekのプロダクトの得意分野だ。
ところが、現実にチップの供給が足りていない状況ではすぐにはそうならないだろうと伝えている。
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“As a matter of principle, science, technology, and economic and trade issues should not be politicised, instrumentalised, or weaponised.「原則として、科学や技術、経済・貿易の分野は、政治的な思惑で利用されたり、手段として使われたり、対立の道具にされるべきではない」
中国外務省のコメントだ。冷静に実利を狙っている中国が一枚上手か。
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