結局、AIはあなたの仕事を奪う?|FINANCIAL TIMES|2025.07.24

上のコメントは、そう考えた末に専攻換えをした大学院生のコメントだ。興味深いことに、このような脅威を感じているのは、これから就職する若者がメインなようだ。

さらに、それには複雑な背景があることについて7月24日付のFT記事は伝えている。
是非全文を読んで欲しい。


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|新卒取る予算はAIに回す… 

Dario Amodei, CEO of AI company Anthropic, warned in May that half of “administrative, managerial and tech jobs for people under 30” could vanish within five years. Big graduate employers such as BT, PwC and Microsoft are cutting jobs, while half of UK companies want to redirect money from staff to AI, according to a BCG survey published in January.
先述の大学院生が感じている「脅威」は正しいようだ。あるAI会社のCEOが警告するには、事務、マネジメント、テック系で30歳以下の人がやる仕事は5年以内に無くなるかもしれないとのことだ。

就職市場を見ると、マイクロソフトなどの大卒を大量にとる会社は、採用するどころか従業員を削減している。

大手コンサルの調査によれば、イギリスの会社の半分は、予算を人員でなくAIに回す(redirect)意向を持っているというのだ。
 
企業が人件費を切り詰める場合は大体、給料が割高な高齢層かスキルの低い若手社員が対象になる。本記事が引用しているデータによれば、チャットGPTが世に出た2022年以来、エントリーレベル、すなわち新卒レベルを対象とする求人は、イギリスで三分の一に減少し、アメリカでは43%減少したとのことだ。
 

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Looking specifically at occupations considered to be at high or moderate risk from generative AI, some graduate roles such as graphic designers and management analysts have thousands fewer workers aged between 20 and 24 than in the year ChatGPT launched. The drop is also noticeable in some highly exposed non-graduate occupations, such as insurance claim assessors, credit counsellors or loan interviewers.
もっとも、採用減になる職種にも濃淡がある。

当たり前ではあるが、AIと親和性がある仕事は明らかに減っている。ここで挙げられているのは、保険会社で保険金請求の審査をする者、銀行等でローン相談を受け審査をする者、グラフィックデザイナーやアナリストなどだ。

たしかに、ある基準に照らして審査系の仕事、PCベースでアウトプットをする仕事などはすでに自動化が進んでいる。

AIが生成するアウトプットに懐疑的な人はいるかもしれない。ただ、そもそも教育途中で完ぺきを求めるべきではない新卒社員がするアウトプットの質と比べれば、同じぐらいか寧ろAIが優秀の場合もあるだろう。
 

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|「AIのせい」は言い訳か?

本記事は様々な分析や専門家のコメントを拾っているが、企業が生成AIを使っていることと、若者の採用減との間にはっきりとした相関はないことを説明している。

むしろ、上の引用で指摘されているように、AIの利用そのものよりも、「その他の要因(other factors)」、例えば、経済の見通しが不確実であること、企業がコロナ後に増やしすぎた人員を調整していること、人件費の安い海外に仕事をアウトソースしていることなどが、アメリカの若者の就職事情に『総合的に』影響しているようだ。
 

ここで引用されている、24歳の就職エージェントの創設者が言うには、弱含みする経済でAIが登場したことは「ある種のスーパー台風(a kind of superstorm)」らしい。つまり、新卒にとって「タイミングが最悪だった」以上の何ものでもないということだろう。本人達の自己責任とは言えないのだ。

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日本に限らず、自分がする時に就活がイージーモードかハードモードかは、自分ではどうにもコントロールできない。

そのまま報われずにここまできた氷河期世代をどうするかが日本では問題になっている。「新たに人を雇ってトレーニングするよりもAIを使ったほうがコスパがよい」との弁は、先見性の無さか、はたまた産業構造転換の一過程の現れか。


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