「秘密のディール」への憶測がFX市場を荒らす|Financial Times|2025.05.23

FT|Asian forex boosted by bets on US trade agreements|2025.05.23



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Bets that currency deals will form part of trade negotiations with the US have helped lift a string of Asian currencies against the dollar as traders look for signs that countries will offer to scale back intervention to appease President Donal Trump.
一部のアジアの通貨が上昇している。

日本円と台湾ドルは年初から8%強も上昇し、韓国ウォンも年初から6%強上昇した。アジア通貨の「一部」というのは、対照的にインドネシアのルピアやベトナムのドンは下落しているからだ。

この背景にあるのが米国との「秘密のディール」が存在するのではとするマーケットの憶測だ。同じアジアの国、トランプ関税の対象にされた国であっても、通貨が上昇している国に関しては、ドルとの為替レートを米国との関税交渉の材料にしているのではないか、とマーケットが勘繰っているらしい。

5月23日付のFT記事「Asian forex boosted by bets on US trade agreements」は、そんな外国為替市場における憶測(とその憶測に基づく憶測)について伝えている。

是非記事全文を読んで欲しい。


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|マールアラーゴ合意はある?

Many traders and analysts believe a so-called Mar-a-Lago Accord - a grand multinational currency deal in the style of the 1985 Plaza Accord when Washington negotiated a depreciation of the dollar with Japan, the UK, France and West Germany - is unlikely.
1985年のプラザ合意。貿易赤字を改善したいアメリカが他国と協調してドル安を誘導した。その結果、1ドル=240円台だった為替レートは、2年後には120円台まで急激な円高が進行した。

これの2025年版が、トランプ大統領の私邸をとって「マールアラーゴ合意」だと言われている。とはいえ、専門家は誰もそれが現実になるとは思っていない。



Instead, they say the market is moving in the expectations that a series of smaller, bilateral currency deals could be simpler to strike.
The large US dollar reserves of wealthy Asian exporting nations such as Taiwan, South Korea and Japan have fed the speculation.
その代わり、多国間合意よりはずっと小粒で容易だが、二国間通貨取決め(bilateral currency deals)でドル安(相手国は通貨高)の誘導が行われることは十分あるのではと思われている。

その憶測のターゲットとなっている国は、アメリカに対する貿易黒字を積み重ね潤沢な米ドルを外貨準備資産として持つ国、すなわち日・台・韓だ。


ところが、この「憶測」を強めたのが今月の始め辺りにあった台湾ドルの急激な上昇だった。台湾ドルは2日の取引日で9%上昇したが、それに対する台湾の中央銀行の反応が鈍かったので、市場では台湾ドル高が容認されているのではという憶測が広がった。

その後、台湾中銀の総裁は市場の過熱を抑えるために為替介入を行ったことを認めた。さらには、米国財務省との関税交渉において、台湾がドル高を誘導することは米国から要求されていないと答えた。


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|日本についても「憶測」?

However, there was an unusually clear affirmation in a statement from the US treasury that exchange rates should be determined by the market and that the current dollar-yen rate reflected fundamentals.
Ahead of the meeting, analysts in Tokyo speculated that conditions were in place for what Nomura's chief FX strategist (xx) called a "hidden deal".
先日カナダであったG7財務相・中銀総裁会合の機会に行われた日米財務相会議では、為替の「水準」に関して議論は行われなかったとされた。これは専門家も予想していた。

ところが、会合後の米国財務省のステートメントで「現在のドル円相場は経済の基礎的条件を反映している(
They reaffirmed their shared belief that exchange rates should be market determined and that, at present, the dollar-yen exchange rate reflects fundamentals)」との表現があったことが注意を引いた。

結局何か合意されたのではないか?記事が紹介している野村のFXストラテジストは、この時に握られた「秘密の取引」を受けて、今後円が3-5%上がっても日本は介入しないだろう、なんてコメントしている。


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(")Traders in the region see the shape of any trade deal that Japan strikes with the US as key to determining what happens to other currencies in the region," said a portfolio manager in Hong Kong. "This will have a "knock-on" effect on other Asian currencies."
憶測は更なる憶測を呼ぶ。
日本がどうなったかは台湾や韓国にとって「先例」になり得る。

この香港のポートフォリオマネジャーのように、日米の関税ディールでドル円がどうなるかによって、他の通貨に関しても波及効果が起こるとしている。

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日経新聞でも「ドル安誘導というナラティブ」と題するコラムでも、「関税協議に伴う「米国のドル安誘導」はメディアと市場参加者が作り出した経済ナラティブという側面が大きのではにか」としていた。

憶測に基づいて憶測することほど非生産的なことはないのである。

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