高まる自然災害リスク。それでも家買いますか?|Financial Times|2025.05.20

FT|Climate risk increases US home repossessions|2025.05.20




* * *

"Mortgage markets are now on the front lines of climate risk,"

自然災害は昔よりずっと頻繁に起こるようになった。金融に関して気候変動リスクの影響をもっとも受けるのは住宅ローン市場(mortgage market)だそうだ。


今年、カリフォルニアでは大規模な山火事が発生したが、焼け出されて住宅を失った人々の今は…みたいな報道には中々お目にかかれない。世界は新しい事件・事故で忙しい。


上はNYにある気候変動リスクを評価するNPOのコメントだ。5月20日付のFT記事「Climate risk increases US home repossessions」を読むと、自然災害が市井の人々のパーソナルファイナンスにどのように影響を与えるかについて、リアリティを持って想像することができる。

是非リンクから全文を読んで欲しい。


* * *


|家が差し押さえられるということ

It was estimated that bout 19,000 properties could be repossessed - or foreclosed, as it is known in the US - this year due to climate risk.

Uninsured damage from flooding, as well as the depreciation of home values and rising insurance premiums from increasingly destructive climate disasters, could lead to as much as $1.2bn in credit losses in 2025, said risk-modelling group First Street.
ハリケーンや台風、洪水などの自然災害が、あなたの住んでいる地域で起こるとする。この団体の見込みによれば、あなたの家が銀行に差し押さえられることになるかもしれない

もちろん理由もなく銀行は家を差し押さえたりなんかはしない。住宅ローンが払えなくなった場合、銀行が担保になっている家を差し押さえ(foreclosed)競売にかけるということだ。

「forelosure」という言葉はリーマン危機のときにメジャーになった。イギリスでは「repossession」と言われる。これが今年はアメリカで1.9万件も発生すると見込んでいる。ちなみに、今年始めのカリフォルニアの山火事で焼失した建物は少なくとも1.6万棟だったらしい。

差し押さえた住宅は銀行が競売するが、災害多発エリアの中古の家はそれほど価値は高くない。ローン残額を回収できなければ銀行にとって信用損失(credit losses)になる。これが今年だけで120億ドルに上るそうだ。


* * *


|保険がかけられなくなる住宅

では、なんで銀行に家を差し押さえられるのか。シナリオはこうだ。
... private insurers have raised premiums, stopped underwriting new policies or dropped coverage entirely in high-risk areas, such as location in California and Florida, which experience higher than average policy non-renewal rates.
不幸にも大規模山火事で家が焼失した、又は洪水で家が流されて無くなったとする。あなたの家が保険に入っていれば、保険会社から保険金が支払われて、同じ土地にもう一度自宅を建てられるかもしれない。

ところが、先日大規模な山火事があったカリフォルニア州や、今年ハリケーンが襲ったフロリダでは、火災保険や洪水保険といった住宅の損害を補償してくれる保険が最早なくなってしまった地域があるそうだ。

これは、保険会社がその地域の住宅をカバーする保険をオファーすることを諦めたためだ。諦めたのは、その地域で今後も同様の災害が発生することが十分起こりうると考えられるため、保険というビジネスが成り立たないことによる。


* * *

In turn, higher insurance premiums can lead to higher mortgage and credit card delinquency, a January report by the Federal Reserve Bank of Dallas said.
These risks to a borrower's creditworthiness - stemming from climate change - can ultimately "threaten household financial health and potentially impact the stability of the financial system", wrote the bank authors.
もっとも、運よく保険を買うことができたとしても、保険料はバカ高になるだろう。保険会社は損しないように保険料を計算するからだ。記事によれば、アメリカでは台風や火災による損害をカバーする保険は一般的らしいが、水害による損失をカバーする保険は任意で、かつ保険料が高額とのことだ。

月払いや年払いでの高い保険料を払い続けることは、当然家計を圧迫する。

保険料の支払いが高額になるせいで、これまで何とか払えていた住宅ローンの返済や、クレジットカードの支払いが滞ってしまうかもしれない。そうすると、最終的に待っているのは住宅ローンのデフォルト(債務不履行)と、それを理由として銀行が行う住宅の差し押さえだ。

同じ地域で住宅ローンをたくさん抱えている銀行は、自らが倒れないために今後は住宅ローンを貸すのを控えるかもしれない。最悪の場合、銀行自身も破綻してしまうかもしれない。


* * *

"At this point, part of that is pricing risk properly so people know what they're getting into when they buy their home."
住宅を購入するならそのリスクを正確に理解すべき、との専門家のコメントだが、first time buyer…つまり初めてマイホームを買う人に、果たしてそんな人がどれだけいるだろうか…

*****



人気ブログランキングでフォロー

人気の投稿