クリスマス嫌いは…グリンチならぬトランプ?|Financial Times|2025.05.05
FT|President’s call for national sacrifice falls flat|2025.05.05
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"it sounded like Marie Antoinette saying 'let them eat cake,'"はるか昔18世紀。フランス革命でギロチンになったマリーアントワネットが言ったとされる「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」。実際に発言した史実はないそうだ。
5月5日付のFT記事「President’s call for national sacrifice falls flat」では、中国との貿易戦争の影響による犠牲をアメリカ国民に求めたようにも聞こえたトランプ大統領の発言について、それが大スベりしたことを伝えている。
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|「国民は我慢を」は大ヒンシュク
He said people had been warning of empty shelves and "maybe the children will have two dolls instead of 30 dolls ... and maybe the two dolls will cost a couple of bucks more than they would normally". But "we have to make a fair deal", he added.中国製品に対する145%の関税措置はアメリカ国内での物価上昇につながるということ。この指摘をホワイトハウスはずっと無視してきた。それを、大統領自身がうっかり上のようなコメントで認めてしまった。
そのコメントがクリスマスの玩具に関してだったのと、「公正」な貿易実現のために民衆は我慢をみたいなトーンだったことのせいで、アンチトランプ勢から強烈に批判されることになった。
アメリカ人にとって、クリスマスに対する思い入れと、その楽しみを奪われる恨みは尋常でない。
Trump's enemies could hardly believe their luck. They mocked him on social media as a modern-day "Grinch who stole Christmas" and "Scrooge McTrump".グリンチ(Grinch)はクリスマス嫌いの妖怪?みたいなもので、子供向けで有名なドクタースースの絵本に出てくる。スクルージ(Scrooge)は名作「クリスマスキャロル」の主人公であるドケチな金貸しの老人のことで、イブの夜に3人の幽霊に訪れられ、改心するというキャラだ。
アメリカ人にとって、クリスマスに対する思い入れと、その楽しみを奪われる恨みは尋常でない。
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|お前が言うな
ここで面白いのが、今回のコメントの件で、トランプ氏はアメリカ国民に「犠牲(sacrifice)」を求めた歴史上の大統領と比較されることになる点だ。それがますます「お前が言うな」感を高めることになった。1942年4月、日本軍による真珠湾攻撃後に第二次大戦に参戦を決めたアメリカが、自国民に増税と配給制導入への理解を求めた。その時の当時のルーズベルト大統領の言葉が以下だ;
"All of us are used to spending money for things that we want, things, however, which are not absolutely essential," he said in April 1942. "We will all have to forgo that kind of spending."
ところが、当時と今とでは、乗り越えるべき試練が違う。さらに、元々アメリカの有権者は、新政権に物価高対策を期待していた。
Here was the president acknowledging his trade war might cause real hardship for voters - many of whom elected him to bring down the cost of living and boost growth.
"This is a crisis created by the person asking you to make the sacrifice," he said. "So it's much less persuasive."歴史学の教授のコメントだ。国民に自分自身が作った危機を我慢しろというのは、超絶「お前がいうな」系のコメントだ。王族の超絶贅沢な暮らしのせいでパンすら買えなくなったフランス国民に「お菓子を食べれば」といったマリー・アントワネットの神経に近いということだろう。
Big names in the industry have seen big stock market declines. The share price of Mattel, maker of Barbie dolls, has fallen 18 per cent since "liberation day" in April, when Trump unveiled his reciprocal tariffs.バービー人形を作る会社の株価は18%落ちた。MGAというアメリカのトイメーカーが作るBratzドールは、トランプ関税分を加味すると、15ドルから29-30ドルに値上げせざるを得なくなる。Bratzドールという有名な人形などは、65%がメイド・イン・チャイナとのことだが、今後の業績への影響次第ではアメリカの工場でもレイオフが行われるかもしれない。
... there was nothing essentially wrong with asking voters to make a sacrifice, but "you have to give them a really clear reason why".共和党の広報コンサルタントのコメントだ。政権が犠牲を強いる「理由」としているのが、歳入の増加、製造業の国内回帰、不法移民や違法薬物の流入阻止だ。
このような「総合的な理由で」というのは、"can't all be true at the same time," 。何でもありというのは通じるわけがない、ということだ。
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