ドルはこれからもっと下がるってよ|Financial Times|2025.04.24

 FT|Dollar has further to fall following recent decline|2025.04.24





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I believe that the recent dollar depreciation of 5 per cent on a broad trade-weighted basis has considerably further to go.
4月24日付FTコラム「Dollar has further to fall following recent decline」で、ゴールドマンサックスのチーフエコノミストが断言したのが上のコメントだ。ドル安はまだいく(further to go)そうだ。

天下のGSのエコノミストですよー。そこらの市場系ユーチューバーが言ってるのではない。


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|強いドルによる恩恵は終わった

Combined with the ongoing portfolio flows into US assets and the outperformance of the country's stocks, dollar appreciation has sharply raised the share of the US in global investor portfolios.

IMFの見込みでは、米国外の投資家はポートフォリオの三分の一を米国の資産で持っているそうだ。その額22兆ドルに達するらしい。

それらの米国資産は、これまでのドル高のおかげで、外貨ベースでの価値も上がってきた。当然として、この米国外の投資家たちが持つ資産全体で見たときの米国資産のシェアも増えていったわけだ。この状況は、NISAでS&P積み立てをしてきた日本人も同じだ。



If non-Us investors reduced their US exposure, it would almost certainly result in dollar depreciation. 

 その米国外の投資家が一斉に米国株からお金を引き上げるとドル安になる。そりゃそうだ。株を売って換金したドルをそのまま持ってても仕方がない。ドルを売って自国の通貨を買い直すからだ。


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 ... This is because balance of payments accounting implies that the US current account deficit of $1.1tn must be financed via a net capital inflow of $1.1tn per year.

In practice, however, most swings in the US current account balance correspond to swings in foreign purchase of US portfolio assets.
If non-US investors don't want to buy more US assets at current prices, those prices must fall, the dollar weaken or (most likely) both.

国際収支(balance of payments)の観点から説明すると、上の小難しい説明になる。まず、アメリカの経常収支はずっと赤字であることを押さえておきたい。トランプさんが問題視している貿易収支は経常収支の一部だが、これもずっと赤字である。

経常収支が赤字ということは、アメリカにとっては海外に対して受取より支払が多いということだ。つまり貿易収支で言うと、例えばアメリカの個人や企業は、ドルを売って円を買い、それで日本車を買ったりするので、売られるドルは理論上安くなっていく。

ところがこれまでのドルがそうではなかったのは、逆方向の流れが証券投資の世界で起こっていたからだ。つまり、日本人がNISAでS&Pを買うように、外国人が米国株など(portfolio assets)を買ったりするので、その際に必要なドルが買われる流れがあったと言うことだ。

筆者は、アメリカの経常収支の動きに最も影響するのがこの証券投資であって、これら海外投資家が、今後の米国政策の不確実性や、Fed議長が解任されるだののゴタゴタで、米国株などから距離を取り始めたことから、一緒にドルも安くなっていくと説明している。引用してないが、筆者は、「この動きは、米国経済が他の国よりも好調かどうかとは関係ない」とする。



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|弱いドルがもたらすもの

What are the economic consequences of a weaker dollar? First, it will exacerbate the tariff-related upward pressure on consumer prices.

では、ドル安によってどうなるか。筆者はいくつか指摘している。

まずは、追加関税によって上昇する輸入品物価がドル安によりさらに上がる。トランプ追加関税によってコア物価上昇率は2.75%から3.5%に上昇すると予測されているが、これにドル安が加わって、さらに0.25%上昇するとみている。


Second, a weaker dollar not only raise import and consumer prices but also lowers export prices (measure in foreign currency). … US policymakers are therefore unlikely to stand in the way of dollar depreciation ...
他方で、輸出についてはドル安は有利だ。例えば、日本人にとっては、ドル安(円高)になってくれるとIphoneが安くなる。ここで筆者が指摘しているのは、そのような場合、つまり、米企業にとって有利な状況が発生すると、アメリカの政治家はわざわざそれを是正しようとはしないだろうということだ。したがって、庶民がインフレで苦しもうと政治は何もしない。


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最後に以下で締め括られている。アメリカでは景気後退は避けられないというのが、GSのエコノミストの見解ということだ。
A decision to implement additional reciprocal tariffs ... could make recession inevitable - no matter where the dollar goes.


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