アメリカの小切手文化とトランプ政権|Financial Times|2025.04.22
FT|Trump leads drive to wean Americans off their fixation with paper cheques|2025.04.22
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The Trump administration wants to stamp out one of American's enduring financial pastimes: writing cheques.
アメリカで銀行口座を開くとついてくる小切手帳。小切手を使える所と人に対しては、これに金額とサインをすることで支払ができる。例えば誰かとルームシェアをしているとする。家賃を自分がまとめて大家に払った後、ルームメイトから小切手で家賃の半分の額の小切手を貰い、これを銀行ATMに入れると、数日後には銀行口座へ入金されている。
4月22日付FT記事「Trump leads drive to wean Americans off their fixation with paper cheques」は、トランプ大統領がこの文化を終わらせようとしていることと、それでも小切手の廃止が難しいアメリカの事情について伝えている。
それでは、一緒にポイントを見ていこう;
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|経済合理性のない米国の小切手文化
In an executive order last month, the White House mandated the federal government to cease issuing or accepting cheques where it is legal to do starting from the end of December.トランプ大統領は小切手による決済を廃止しようとしている。まずは、小切手文化がしつこく残っている連邦政府(国)への支払で、小切手の使用を禁止するらしい。記事によれば、2023年の政府向け支払いの約5分の1で小切手が使われているとのことだ。日本だと例えば自動車税は都にネットで払える。
Cheques are more expensive to print and post than electronic transfers, more susceptible to fraud and less likely to make it to the intended recipient.紙の小切手廃止の理由は明らかで、電子決済よりはるかにコストがかかる(記事だと10倍)ということだ。用紙への印刷や流通にコストがかかるのは勿論、物理的な改ざんだったり、紛失のリスクもある。
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|それでも無くならないわけ
Cheques' enduring use is partly a symptom of the highly fragmented US banking system. With more than 4,000 banks and a similar number of credit unions, forming a consensus to promote a replacement system is much harder.では何でこんな非効率な決済がなくならないのかというと、利用者の利便性でなく業界の事情の故だ。ここで伝えられているのは、米国は銀行やクレジットユニオン(信用組合)が4,000以上あり、それらが相乗りする既存のやり方を変更しようにも合意形成が超難しいということだ。
Banks are also reluctant to lose out on credit and debit card fees, which are higher than elsewhere, making them slow to push for account-to-account payments that could rival cheques. Small business are among the biggest proponents of cheques to avoid card fees.別の大人の事情としては、小切手にかわる電子決済が広まると、クレジットカードで設けている銀行としてはアンハッピーだということだ。
クレカ決済が行われるごとに発生する手数料や、クレジットカード債務滞納のペナルティーとしての手数料は、銀行としては失うには大きすぎる。
他方で、手数料を払わされる小売店などの事業者も、クレジットカードの普及を望んでいない。それではどうするかというと、現状都合の良い電子決済方法がない以上、昔ながらの紙の小切手がなくなってもらっては困るということだ。
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別に日本だけが非効率を変えられないというわけじゃない。
考えれば合理的なことが実現しない例はどこにだってあるし、その全てに実現しない経緯と絡まった事情があるということだろう。
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