その投資がアウトかは時代が決める|Financial Times|2025.03.31
FT|Norway's $1.8tn oil fund urged to drop 'crazy' ban on backing defence groups|2025.03.31
国営ファンドが防衛産業に投資することはNGか?その答えは昔と今で違ってくるかもしれない。
は、北欧の国ノルウェーで起こりつつある、国営ファンドの投資先に関する倫理論争について報じている。
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|SWFと倫理規範
Norway should drop a rule that is preventing its sovereign wealth fund, the world's biggest, from investing in defence companies such as Boeing, ...から記事は始まる。「sovereign wealth fund(SWF)」とは政府が運用するファンドのことだ。厳密には異なるが、イメージとしては日本のGPIF(政府年金投資基金)に近い。北欧ノルウェーでは石油がでるので、石油産業からの収益をこのSWFが世界中の株式や債券で運用している。同じく石油がでるサウジアラビアもSWFをもっている。
Norway's $1.8tn oil fund has been barred from holding stakes in most defence companies since the early 2000s when its parliament imposed ethical rules ...
The fund is subject to product exclusions by Norway's parliament including tobacco, coal and parts of nuclear and cluster weapons.
このノルウェーのSWF、これまでは議会が決めた「ethical rules(倫理規範)」によって、防衛産業、即ち戦車やミサイルを作る会社の株を買うことはこれまで禁じられていた。
そりゃそうだ。核ミサイルやクラスター弾を国がスポンサーしていることは、間接的に戦争行為に国が加担しているともいえ、倫理的にOKなわけがない。記事にもあるように、ノルウェー議会が2000年代に決めた倫理規範は、武器のほかにもタバコや石炭産業への投資も禁じている。
ちなみに日本のGPIFは、制度上、個別の会社の株式に直接投資することはできない。代わりにGPIFは外部の運用受託機関に投資判断を委託している。
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|「偽善」とまで言う?
このポリシーが批判を受けており、FTの一面記事に載るまでになった。批判しているのは野党有力議員とのことだが、ノルウェーは今年に議会選挙を予定している。この批判の背景は、言わずもがなだが、ロシア・ウクライナ情勢とトランプ新政権の発足を受け、ヨーロッパも防衛予算を増やすべきとの圧力が高まっているためだ。
そのような背景から、欧州の防衛関連株は最近急騰している。例えば、ドイツのラインメタルという自動車部品の他に防衛部門を持つ会社に関しては、その株価は年初来118%の上昇を見せている。
それで、ノルウェーSWFも防衛産業に投資すべきと主張する理由についてだが、この野党議員曰く、倫理規範のせいで防衛産業に投資できないのは「偽善だ」ということらしい。
この「hypocritical」という言葉は本記事に2回でてくる。
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それで、ノルウェーSWFも防衛産業に投資すべきと主張する理由についてだが、この野党議員曰く、倫理規範のせいで防衛産業に投資できないのは「偽善だ」ということらしい。
"It's hypocritical. We are a Nato member, we are very dependent on the security that the US can give us. We buy equipment from the same companies but we can't invest in them,"
この「hypocritical」という言葉は本記事に2回でてくる。
他にも、ノルウェーSWFが核ミサイルを作る会社に投資できないのは「ironic(皮肉だ)」とする議員の指摘も報じられている。同国はNATOの集団安全保障や米国の抑止力に依存しているにもかかわらず、それらを構成する産業に投資できないことは、「偽善」・「皮肉」らしい。
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これに違和感を感じない人はいるのだろうか。いくら国際政治情勢が変わったとはいえど、これまで国による投資判断の基礎だった倫理規範を「偽善」とまで言っていいものだろうか?それとも、倫理規範を作った議会自身がそもそも「偽善」と知りつつ規範を作成していた、と自ら認めるというのだろうか。
とにかく、世界最大のSWFによる方針変更は、他の株主にとってもインパクト大だ。
The actions of the Norwegian oil fund - which on average own 1.5% per cent if every listed global stock and 2.5 per cent of one in Europe - are particularly significant and could be widely followed by other sharehodlers.
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「黒い雨」の中の言葉。「いわゆる正義の戦争よりも不正義の平和の方がいい」が何故か思い出された。
今年こそ平和な年になりますように。
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