国からの"個人的報復"に怯える日々|FINANCIAL TIMES|2025.03.25

 FT|Law firm defends its deal with Trump|2025.03.25





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「No one is above the law(誰も法の上にいない)」

アメリカで政治家や検察官がよく言う言葉。元ネタはセオドア・ルーズベルト大統領の言葉とのこと。

民主主義社会ではこのフレーズはビシッと決まるように思われるが、現実では相手次第でこのようになるという例がアメリカで起きている。

3月24日付FT記事「Law firm defends its deal with Trump」は、過去にトランプ氏の訴追に関与した民主党寄りの法律事務所が、新政権が出した大統領令によって存続の危機まで追い詰められたというストーリーを報じている。

それでは一緒にポイントを読んでいこう;


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|大統領令という「報復」!?

The head of Paul Weiss defended his decision to strike a deal to end a dispute with US President Donald Trump on Sunday, arguing that the survival of the elite law firm was at risk.
から記事は始まる。Paul Weissとはニューヨークの有名な法律事務所だ。この事務所の代表のKarp氏が、彼の事務所の存続のために大統領との争いを終わりにした、ということが本記事の内容だ。


日本語ニュースだとロイター(https://jp.reuters.com/world/us/74NSHINLFFIQLO4RLJ4F4BORPQ-2025-03-27/ぐらいしか報じていないが、経緯は映画並みに面白い。AIにまとめてもらった結果は以下の通りだ。
  • トランプ政権とPaul Weiss法律事務所の間で起きた出来事は、2025年3月に発令された大統領令に端を発します。トランプ大統領は、Paul Weissを標的にした大統領令を発令し、同事務所の弁護士の政府保安許可を取り消し、連邦政府建物への接近を制限しました。
  • この大統領令の背景には、Paul Weissの弁護士がトランプ氏を訴追する目的でマンハッタン地方検察局で働き始めたことがありました。トランプ政権は、Paul Weissが提供する無料法律サービスを要求し、同事務所は最終的にトランプ政権の目標を支援するために4,000万ドルのプロボノ法務サービスを提供することに同意しました
  • また、Paul Weissは多様性、公平性、包括性のポリシーを追求しないことにも同意し、これにより大統領令が解除されました。この一連の出来事は、アメリカの法曹界に大きな衝撃を与えました。
要は、政府系の仕事から追放されるという「報復」を受けた、ということだ。「プロボノ」とは無料法律相談などのボランティアで、「SUIT」などの法廷系のアメリカドラマではよくでてくる。


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|全ては存続のため

Paul Weiss initially prepared a lawsuit to fight the executive order in court, but decided to negotiate with Trump after it became clear the directive threatened to unravel the firm by scaring off existing clients and new business ...
Paul Weissは最初は法廷で争う予定だったらしい。ところが、既存の顧客が離れていくなど、争いを継続すること自体の事務所自体を弱体化に繋がる
ことが分かった以上、ある意味無限なリソースをもつ国を相手とするケンカは続けるべきでないと判断した。


Karp, who was a prominent supporter of and fundraiser for Kamala Harris's presidential campaign, added that his decision to negotiate with the White House was driven in part by a fiduciary duty to the firm's employees.
事務所トップのKarp氏が争いを止める理由にあげたのが「fiduciary duty」だ。日本語だと「善管注意義務」とか訳されてたりするが、英語で意味を検索すると「legal and ethical obligation to act in the best interests of the company and its shareholders」、即ち、株主と従業員のため、ということだ。


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上に貼ったAI要約にもあるように、この法律事務所はトランプ氏の訴追に関与しており、代表のKarp氏自身も民主党のハリス候補の大口支持者であった。今回、同旨の大統領令が標的としたのはPaul Weiss以外の法律事務所宛も含む。

関連する3月26日付のFT記事「Law firms braced for more Trump retaliation」には、標的になるのを避けようと、トランプ氏寄りの弁護士やロビイストを競って採用している法律事務所もあると報じた。

ロイターの報じている通り、本件は米国の司法制度を危うくする「個人的報復」と言えるかもしれない。とにかく、とってもアメリカらしいと出来事である


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