「事業仕分けは大して効果なし」は日米共通?|FINANCIAL TIMES|2025.03.07, 03.13




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イーロン・マスク氏のイニシアティブによる連邦予算削減言わばアメリカ版事業仕分け。政府機関の廃止や職員の大量解雇が行われたとの報道が続いた、数字で見るとそこまで効果は上がっていないようだ。

313日付のFT記事 Musks cuts programme fails to stop US federal spending breaking record は、1,000億ドル(約15兆円)削減を宣言した
DOGE(政府効率化省)により数万人の政府職員がレイオフされたものの、今年2月における政府支出は寧ろ記録的な大きさとなったことを伝えている。

 
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Musks so-called Department of Government Efficiency claims to have already made more than $100bn of savings but 
から始まる最初の2パラで本記事のストーリーの骨格が把握できる。マスク氏トップの政府効率化省が「効率化」したとする額は1,000億ドルだが、先月政府支出は6,030億ドルだった。この額は記録的な高さであり、少なくとも数字上は政府支出の額は減っていないとしている。
 



日本の外務大臣にあたるルビオ国務長官がトップの国際開発庁(USAIDと略される)。大幅に業務が縮小された役所だ。この役所の月間支出は前年の半分の2.26億ドルに削減されたのだが、他方で同じ時期に医療保険支出3増加50億ドル)、社会保険支出6%増加(80億ドル)したとのこと。

削減した額と増えた額を比較すると、DOGEによる合理化の成果は「so small as not to be identifiableだと伝えている。政府機関のリストラで浮かせた額は、全体でみれば「気づかないぐらい小さい規模だということだ。


この点日本の状況と重ならないだろうか。社会保障費の増大という構造的な問題に対処しなければ、いくら事業仕分けで個別に削ったところで焼石に水ということだろう。この問題はどうも先進国共通さらには世界共通かもしれない。成果の伴わないリストラを看過できなかったのか、本記事の後半部分では、マスク氏による個別省庁の人事への介入を制限すべくトランプ大統領自身も動いたことを伝えている。
 

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|切られるコンサル、されど強かなコンサル

37日付のFT記事 Doge expands blitz against consultant contracts では、同じくDOGEによる政府支出削減の取組みの下、政府機関とコンサルティング会社との契約解除されており、しかもそれが数十や数百単位で起こっていることを伝えている。

コンサルといってもその内容は多岐にわたるだろうが、日本だと省庁が政策関連の企画や調査をコンサルに下ろしている例がある。職業役人は無限の事務仕事を割り当て、クリエイティブな仕事は実はコンサルに全振りなんて実態もあるのではないか
 
この記事で例として上がっているのは、IRS(内国歳入庁)向けのITサービスに関する包括契約だが、7年間で19億ドルの規模の契約だったとのことだ。本記事は次の記述で始まる;
 

として、効率化波の影響をコンサル会社も受けつつあることを伝えている。読み進めると出てくるが、新政権発足後の六週間で切ったコンサル契約の数はこれまでの通年でのキャンセル件数よりも多いということだ。
 

の二つのパラにあるように、無計画な人員合理化政府機関の機能低下に貢献しているということだ。本来であれば、コンサルに仕事アウトソースしなくてもいいよう職員自体の能力向上を図るべきであるが、その対象たる職員がいなくなっているようではどうしようもない。
 
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他方で、この記事の最後には、そのような将来を見越して事態を楽観視しているコンサル幹部の様子も伝えている
 
Some consulting industry executives have expressed optimism there could eventually be lucrative opportunities in outsourcing government services or implementing new IT that improves efficiency
内容としては、最終的には業務アウトソースやITサービスを効率化の名目でコンサルに高額で依頼せざるを得ない状況になるだろう、とコンサル業界のトップ層では考えている、と伝えている。

この部分を含む最後まで読むと、政府とコンサル会社との関係について色々考えさせられる。
 
財政健全化の観点から俯瞰すると、政府の人手不足の状況をわざわざ作っておいて高額なコンサルにアウトソースするのは本末転倒とも言えるだろう他方で、役所の中に旧態依然とした非効率・非生産性があり、それが職員削減でもしなければ改善しないほど深刻なものだったため、半ば強引に外部サービスを使用するという話であれば、まるで違った評価になるだろう。


いずれにせよ、日本とアメリカの国家公務員の皆様、色んな意味でおつかれさまです!ということだろうか。

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