つまりバブルってことでいいの?|FINANCIAL TIMES|2025.03.04
FT|Concerns over US asset bubble grow as ‘huge bet’ placed on AI |2025.03.04
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PERとは Price to Earnings Ratio のことで、日本語だと「株価収益率」と訳される。この指標は「株価(price)」を「一株当たり利益(earnings)」で割って求められる。割って求めた「比率(ratio)」は 『何倍』 という表し方をする。
「株価」 の伸びが 「利益(一株当たり)」 の伸びよりも大きいとPERは上昇する。これを例えば日経平均とかS&P500について時系列でPERを観測し、顕著な上昇が認められる場合、株式市場が過熱している、つまりバブルではないかと警戒する。
ネットで検索してみると、森永さんが指摘しておられたのは「シラーPER」という指標で、これが25倍を超えるとバブルとみなされるとのことだ。
https://www.multpl.com/shiller-pe
動画で森永さんがPERで見ればバブルと語っておられるのを見たとき、単純に「おぉっ」と思った。なぜなら、その頃の日系の報道はどれも、「(修正前)PERは過去の水準に比しても過大とは言えない」というトーンだったからだ。
上のリンクから見られるシラーPERのページは、修正前のPER(S&P500)も別ページで示しているが、過去平均が16倍である修正前PERは足下では28倍ぐらいだ。他方で、シラーPERを見ると、過去一のピークは1999年12月の44倍になっているが、これはちょうどドットコムバブルの時だ。同比率はその後下落し、2008-9年の金融危機を経て以来上昇を続けるが、足下では35倍程度まで上昇している。
シラーPERの定義を見ると、Price earnings ratio is based on average inflation-adjusted earnings from the previous 10 years, known as the Cyclically Adjusted PE Ratio (CAPE Ratio) とある。つまり、景気サイクル調整済みPERということで、過去10年間のインフレ率を考慮した「利益」を分母に使用しているとのことだ。「シラー」さんとは米イエール大教授のことらしい。
3月4日付のFT記事 Concerns over US asset bubble grow as ‘huge bet’ placed on AI では、この シラーPERを用いて、森永さんが言っておられたのと同じ指摘をしている。
それでは一緒にポイントを読んでいこう:
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|Are you diversified enough?
US stock’s huge surge since the global financial crisis means they account for almost two-thirds of…
で本記事は始まるが、このパラと次のパラがこの記事の全てだ。
この二つのパラが言っているのは、概ね以下だ:
- 世界で投資可能な株の3分の2はアメリカ株
- AI関連株全体の市場価額は、ヨーロッパの全ての株を足したものと同じ規模
こういう状況だと、全世界株投信や米国株インデックス投資で市場全体を買っている = 十分に分散投資をしている、という主張は説得力を欠く。
少し下がったパラにロンドンビジネススクールの教授のコメントが引かれているが、
ということで、当然にして、
“That means you’re very vulnerable to this huge bet on AI”
ということになる。分散投資としてインデックス投信を買っていたとしても、実質的にはAIブームにフルベット状態になっている、ということだ。
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|ブームは本物?
当然米国にも投資イケイケ派と慎重派の両論がある。面白いのは、その主張や根拠までが、モリタクさんがイケイケ派との対談の中で語っている内容と同じだったという点だ。
イケイケ派は次のように言う;
それに対する慎重派の反論は、少し前のパラにある。大事な所なので是非読んで欲しい;
とのこと。テック系大手の株価は「バカみたいに過大評価されている」と伝えている。
何をもってそう言うのかは次のパラに書いてある。即ち、
The “Magnificient Seven” group of giant technology stocks … hold almost a third of the S&P 500’s $51.8tn market value…
で始まるパラがこの記事の核心だ。このパラの最後のところに、冒頭で言及した「シラーPER」の顕著な高さについて指摘している。
… the index’s cyclically adjusted price-to earnings ratio, a measure of valuation, is approaching its highest level since the early 2000s.
記事にもシラーPERのグラフが載っている。2000年あたりのドットコムバブル時の水準である40倍超に近づきつつある姿が認められる。
是非グラフを見てほしい。冒頭にも書いたが、2000年あたりにピークの40倍超に達した「シラーPER」は、2000年代前半には21倍あたりまで一気に下落し、08-09年のリーマンショック時にはさらに14倍ぐらいにまで下落している。
このパターンを当てはめると、頂上が近ければその後に来るのは谷、と今回も言えるだろうか。
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最後に、このようなマーケットにおける投資家の状態をうまく表現しているところを紹介する。;
まさに、冒頭の生成画像の状態だ。
画像では既に卵が少しこぼれ落ちているが、決してバスケット自体を落とすといった事故のないよう…
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