上司に報告すべきは5つの成果?それとも… | FINANCIAL TIMES | 2025.03.03

FT | The one thing you needed to do last week?| 2025.03.03



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例えばある日、あなたが務める会社の総務や人事あたりから「先週やった仕事を5つ箇条書きで報告して」という依頼のメールを受け取ったとする。

そのメールが最近社外から来た役員の指示によるもので、彼は誰もが知る有名人。しかも「返信しない場合は退職の意思とみなす」などと本人がSNSでポストしていたとしたら、いち職員のあなたはどうするべきだろうか?

先日、アメリカの政府職員には週末にこういった内容のメールが実際に届いた。報告期限は週明けの月曜深夜に切られていた。

3月3日付のFinancial Timesコラム|The one thing you needed to do last week? では、米新政権のマスク氏の指示で送られたメールの件を題材に、もう1人のセレブCEOの例にも言及しつつ筆者の考えが語られている。

それでは一緒にポイントを読んでいこう:



|恐怖のメール!?

冒頭に書いた、米政府職員へ恐怖のメールが送られた件は、
Here's one thing that is true: last weekend, Musk arranged for US government workers to receive...
People were asked to send five bullet points listing their accomplishments by midnight on Monday...
あたりに、簡単にまとめられている。


この恐怖のメールにどう対応すべきかについては、役所によって指示が違ったようだ。返信するように、若しくは無視するように職員に指示したところもあれば、とりあえず炎上が止むまで待てと指示したところもあったらしい。

そもそも従業員の解雇要件が厳しいとされる日本に住む我々からすると、こんなメールの扱いにそれほど深刻になる必要はないのでは、と思うだろう。


このコラムの筆者も最初はそのように感じていたらしいが、
... until I spoke to ... a single mother who had just been diagnosed with breast cancer and works at a federal agency, ... If she loses her job she loses her health insurance...
で書かれている内容を聞いた後に意識が変わったという。

アメリカでは仕事を失うということは、会社が提供する健康保険のメンバーシップも一緒に失うことを意味する。

虫歯一本治療したら20万円かかるなどと言われる国。そいういう社会の人たちにとっては、対応を誤るわけにはいかないメールということだ。

内容としては、
  • 政府効率化省トップのマスク氏は、そのチェーンソーをふるう前に職員が実際何をしているかについてより理解したかったのかもしれないが、
  • 同じようなことは、リモートワークの普及で部下の仕事が見えなくなったどの会社も感じていることだ、
と書いている。リモートワーク中の従業員のマウスの動きを観察するツールがちょっと前に売れたのも、会社側が部下の監視に腐心していることの表れとのことだ。


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|うまく説明できない無数の仕事

When I heard of Musk's edit, I realized quite a bit of what might go into my five bullet point was not very visible...  
から始まるパラに続く筆者の仕事に関する観察は、誰もが納得する内容だ。

筆者の先週の仕事は取材、ウェビナー、ミーティングだったそうだが、これらは生産的であったことは自分は分かっているものの、誰かにそれを証明するのは難しいと言っている。
そのことは以下の記述に表れている;
... They cannot capture the myriad tasks people do each day that make a business hum. Nor can they always tell how well a job has been done.

この辺で語られているのは、日々の業務を構成している無数のタスクというのは、それ自信を成果として特定しづらいものであるし、それらを上手くやったと証明することも難しいということだ。ごもっともな指摘だ。


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|彼と対比しちゃうか…

とはいえ、マスク流の「今週の成果報告」に勝る方法があるかは自信がないが、と著者は言いつつも、別のビジネスセレブによるやり方を紹介している。非常に参考になるやり方だ。


その黒い革ジャンをいつも着ている億万長者は、自分の会社で起こっていることの把握、さらに、自分がトップとして掲げる優先事項に沿って部下が働いてくれるかを正確に把握するために、「成果」ではなく「自分が今やっているもので重要なもの5つ(T5Ts)」を報告させたというのだ。

この人こそ、NvidiaのトップであるJensen Huang 氏だ。


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筆者はどちらのスタイルが優っているとは明確には書いていないが、どちらが好まれるかは明白であろう。

トップAI企業のHuang氏のエピソードは、日本の新聞では殆ど伝えられていないのではないか。こういう発見があるからこそ、英字新聞では、取材内容や筆者自身の考えが凝縮したコラムも、通常の記事と同じようにチェックしておきたい。


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