異例なTOB争いとホントの狙い | FINANCIAL TIMES | 2025.02

FT | US buyout firms' $4bn fight for Japan's Fuji Soft breaks out into open warfare | 6 February 2025




* * *

米ファンドによる日本のシステム開発会社を巡る争奪戦。半年近く経てようやく終結した。

日経新聞| KKRが富士ソフト買収へ ベイン、TOBせず撤退 株価高騰、収益向上は後回し | 2025.02.18



本件は日系の新聞では新たな買収額提示といった動きがある度に報道されていた。今年になると、FTでも比較的大きく報じられるようになった。

FT| Bain and KKR's brutal battle over trove of hidden assets | 2025.01.30

FT| US buyout firms' $4bn fight for Japan's Fuji Soft breaks out into open warfare | 2025.02.06

富士ソフトを巡るKKRとベインキャピタルとのTOB争いの一連の経緯については、AIにまとめてもらい省エネさせて貰おう(一部内容以外を編集した)。

読む前に理解すべきポイントは、当社の取締役会(=会社)が支持するのがKKRで、当社の大株主でもある創業者一家が支持していたのがベインであるという点だ。


* * * * *


富士ソフトを巡るKKRとベインキャピタルのTOB争いは、以下のような時系列で展開されました:

2024年
8月上旬:
富士ソフトはKKRによるTOBを受け入れ、株式を非公開化することを発表。買付価格は1株8800円。
9月5日
KKRがTOBを開始。当初予定を前倒しし、2段階方式に変更。
10月:
ベインキャピタルがKKRを上回る1株9450円でのTOBを正式に提案。
11月20日
KKRが第2回TOBを開始し、買付価格を9451円に引き上げ。
12月:    
ベインキャピタルが敵対的TOBも辞さない方針に転換し、買付価格を9600円に引き上げ。
2025年
2月4日: 
KKRが買付価格を9850円に引き上げ。
2月17日: 
ベインキャピタルがTOBを取りやめると発表。
2月19日: 
KKRの買付期間が終了し、KKRが富士ソフトの買収に成功。


このように、半年以上にわたる攻防戦の末、KKRが最終的に富士ソフトの買収に成功しました。

* * * * *

両社によって行われた買取価格引き上げ競争の結果、買付価格は当初の8,800円から9,850円まで引き上げられた。

この株価上昇について、前掲の日経の記事では、「富士ソフトの株価は17日の終値ベースで9,834円と、KKRのTOB方針が報道される直前の8月初旬の株価に比べて4割以上高い水準で推移する。ただ、この間、富士ソフトの事業成長に向けた戦略は停滞し、株価高騰も価値向上を伴ったものではない。」とまで言われている。

* * *


本件に関して日経の記事では、会社(取締役会)から賛同を得ていないベイン側が、正式審査を経ない「予告TOB」を続けたという点をフォーカス。それを可能としているTOB(株式公開買付)の制度(金融商品取引法)にも不備がある、と指摘をしており、どちらかといえば正式手続を経ているKKR寄りのトーンだ。

日経新聞| 富士ソフト争奪戦、突然撤回のリスク、TOB制度 株主保護に穴、「予告」規制の導入論点に | 2025.02.09


他方で、FTでファオーカスされているのは別の点だ。2月6日付の記事は、(1)買収対象となった富士ソフトについて、当社の事業そのものよりも当社が保有する不動産に対して両ファンドは価値を置いていたという点、(2)今回のような争奪戦は、海外のアナリスト等からは「highly unusual」(かなり特殊)とみられていた点、を伝えている。

それでは、2月6日付のFT記事のポイントを読んでいこう;


* * *

|hidden assets?

Fuji Soft might seem an odd focus of such intense competition. But below the surface the company appears a valuable opportunity for private equity groups...

から始まる数パラは、単純に読んでいて面白い。この次のパラにある;
"But it's a low-margin business, as they .... have been slow to pass on price increases."

を含む全部で6パラぐらいまでが重要な箇所だ。「property portfolio」というのは、富士の保有する不動産のことを指す。


ざっくりとした内容としては……当社は米国の有名ファンドがガチで争奪バトルするほどの会社だろうか…本業は物価上昇を価格転嫁できておらず、大して儲かっているビジネスとは言えないが、当社が保有する不動産を買収後に活用することを加味すれば、トータルでは全然ペイする案件だと思われている……といったことを丁寧に解説してくれている。


* * *

|いろいろ異例

もう一つのフォーカスされている点としては、これらの部分より前にでてくるパラだが;

"In the US, companies and managers have to make decisions based on fiduciary duty and that means ... preferring a bid that offers higher price to shareholders,"
との指摘がある。主な内容としては、買収をオファーされた会社としては、普通は高く買ってくれる買い手を選ぶのが、株主にとってベストである。結局はそれが全てなのだが、特異なことに
("This kind of dispute likely wouldn't get to this stage in the US")、日本だと価格以外の基準をベースに買い手を選ぶ裁量が取締役会に与えられている、と伝えている。



具体的には、これに続くパラにあるが;
として、既に34%を取得済みのKKRをバックとした当社の対応、即ち、当社がベインを拒否し続けたことを、(会社法や金商法に則ったプロセスであるというのはさておき)「特異」としている。



他にも、記事が「異例」であるとする別の点として、上記の記述に続くパラにおける;
Bain has been backed by Fuji Soft's founding family, ... and has decided to press ahead without the board's approval, another highly unusual move in Japan,
にある。内容としては、会社側の承認なくして大株主たる創業者家と組んたベイン側の行動も、これまた「異例」であったとしている。


* * *


本記事は17日の決着前の記事であるが、本記事の最後辺りに;
と、本取引に関係している銀行の本音を載せているところが思わずクスッとさせる。
本記事はかなり骨太な内容ではあるが、日本での出来事をこうして英字新聞で読める機会は単純に有難い。


*****



人気ブログランキングでフォロー

人気の投稿