暗号資産投資はクール!?|FINANCIAL TIMES |2025.02.14

FT | Trump's backing pushes bitcoin deeper into traditional finance



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"Holding bitcoin is cool again." だそうだ。

2月14日付 Financial Times | Trump's backing pushes bitcoin deeper into traditional finance では、

自国を「暗号資産の首都(crypto capital of the planet)」にする、とした米大統領のトーンを受け、政府や中央銀行の準備資産(reserve)に暗号資産を追加すべき…要は国が暗号資産に投資しろとの案が、一部の連邦議員等によって検討されている点を伝えている。

さらに、銀行や年金基金といった機関投資家は、暗号資産への投資が晴れて解禁となるのを待望している、との点も伝えており、本記事はこれらを総合して、暗号資産が「伝統的な金融(traditional finance)」に浸透しつつある、とまとめている。


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本記事は全面記事の2/3ぐらいの比較的長い記事であるが、上述のような推進派と慎重派の意見とがバランスかつテンポよく展開されるため、退屈せずに読了することができる。


かの米国では昨年、証券取引委員会(SEC)によって、現物暗号資産に投資するファンド(ETF:上場投資信託)が承認された。日本でも、金融庁が暗号資産を株式等と同じ金融資産と位置付けるか検討している
との報道が先日あったが、本場米国だと(マトモかどうかはさておき)ここまで議論が及んでいることを知ることができる。


それでは一緒にポイントを読んでいこう:

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|政策論?としての準備暗号資産

この記事で紹介されている主な動きは、冒頭に上げた二点、即ち、(1)国による暗号資産の保有と、(2)銀行等の金融機関による保有、に関してだ。 

前者については、

Enthusiasts are particularly excited by the prospect of a national bitcoin stockpile, which would cement endorsement of ...

 から始まる、最初の方にあるパラで簡潔にまとまっている。

内容としては、米国政府が暗号資産を正式な準備資産として承認すれば、今まででさえ急上昇してきた価格はさらに上がるだろう、ということを伝えている。



この意見に乗っかる人々のコメントを伝えるパラグラフとして;

"Bitcoin has found a way to co-opt governments," adding that Trump's backing had "removed the last existential threat to bitcoin".

 を含むパラから続く、本記事中盤にある数パラは関心を引く。とりわけ、ここから3パラ飛ばしたところにある、ある上院議員の主張として;

... said the token's rising value could be used to cut US debts. In July, she introduced a bill seeking to get the US to buy 200,000 bitcoins from the market....

とあるように、この議員は政府や中銀が暗号資産に投資して保有するという内容の法案まで用意したことを伝えているが、それは国の負債削減に資する、と政策論っぽく言っている点がなんとも興味深い。



また、記事の後半部分にあるが、この動きは米国に限らない。とはいっても、同じことを検討している国はチェコの中央銀行ぐらいらしいが。


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|慎重派?良識派?

これに対する慎重派の意見として、本記事は、政府高官等の意見の他、記者自身による指摘をバランスよく伝えている。例えば;

But how such a reserve would work and what it would mean for bitcoin is unclear. And would taxpayers be left holding the bag if - or when - prices fall? ....

を含むパラや、欧州中央銀行のラガルド総裁のコメントである;

She added that "reserves have to be liquid, secure and safe" and that "they should not be plagued by the suspicion of money laundering... 

 を含むパラは、ポイントを簡潔に伝えている。


内容としてはどちらも、「これは国の金だからね。念のため」というもっともな指摘だ。両方とも短いので是非読んで欲しい。要は、価値が暴落しましたサーセン!とか、ハッカーに盗まれて流出しましたサーセン!とか言われて許される資産ではない、ということですね。

英語学習面では、「be plagued(悩まされる)」という表現はこう使うのかと勉強になる。


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|うちらもそろそろいいでしょうか?的な

もう一つの点、すなわち、銀行や年金基金といった機関投資家による暗号資産の保有については、記事後半部分にまとまっている。例えば;

For bitcoin to become a main stream financial asset, it needs Wall Street banks, fund managers, pension schemes and other large institutional players to get involved at scale

 から始まる5から6パラぐらいがそうであるが、

内容としては、これまで監督当局からの目を気にして暗号資産を保有(自己又は顧客のために)することから距離を置いていた銀行などの機関投資家も、現政権の姿勢を受け、今後は「普通の金融取引」として、堂々と取引に参加してくるかもしれない、としている。


この他にも、新政権が検討している案として、暗号資産交換業者や暗号資産トレーダーが銀行からの借入などをしやすくすることも検討されていること。本記事では、これらを含めた動きを "all moves which will bring the industry more in line with traditional finance"としており、暗号資産と伝統的な金融サービスとがより繋がるようになっていく、と伝えている。


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|経済専門紙としての指摘

本記事はこれらの動きに関して、経済専門紙としてそのリスクを指摘する内容で締めくくられる。記事最後の3パラ程度なので是非頑張って読んでおきたい。

The volatility of crypto, the risk of price crashes and the use of leverage means as it becomes more mainstream it "could destabilise the broader financial system"....
内容としては、この記事で紹介されるように、国や金融機関が暗号資産マーケットに深く関係するようになるにつれて、暗号資産のマーケットの混乱を契機とした金融危機が起こりかねないこと、そして、暗号資産の価格急落は過去にあった、という良識のある指摘だ。



これまでは半ば「強欲だった者の自業自得」で済んでいた暗号資産。これが今後、銀行や国がオフィシャルに暗号資産を保有するということになると、最悪の場合には金融危機や国家財政不信に繋がるということは自明なことだろう。別に政策に関わる者でなくとも警戒感は持って然るべきと思われた。


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