【FT要約】「闇の白タク船」に頼る米政権の焦り…ガソリン高騰でトランプが禁手に手を伸ばす裏事情|英文ビジネスニュース日本語解説
この記事の論点:
選挙対策のインフレ抑制か、同盟国への裏切りか!「闇のタンカー群」規制緩和を巡るトランプ政権の焦り
— 中間選挙を控え跳ね上がる燃料高に直面する米政権が、効果薄とされる露・イランの「シャドーフリート」制裁緩和を検討するドロドロの裏事情を解説
"The US is considering moves to ease restrictions on “shadow fleet” tankers linked to Russia and Iran as it struggles to bring down soaring diesel prices ahead of November’s midterm elections."
「シャドーフリート(shadow fleet:影の艦隊)」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
欧米の制裁をくぐり抜け、原油を極秘で密輸する非合法な民間タンカー群のことだ。平たく言えば、「国際海運における闇の白タク船」である。
これまでアメリカ政府は、こうしたヤバい船や運航会社を片っ端からブラックリストに入れ、自国の企業が取引することを固く禁じてきた。
ところが今、11月の中間選挙(midterm elections)で大苦戦が予想されるトランプ政権内で、政治的な「大人の都合」からこの規制を緩めよう(ease restrictions)とする動きが浮上している。今回紹介する記事が暴露した、なかなかドロドロした裏事情だ。
事態の裏にあるのは、全米で跳ね上がるディーゼル燃料(軽油)の価格だ。トラックや貨物列車といった物流の足である軽油の値上がりは、あらゆる物価を直撃する。「物価高でもう限界だ」と怒る有権者が票を投じる前に、なりふり構わず燃料安を演出したい政権の焦りが透けて見える。
ぜひ元記事も読んでみてほしい。
|裏切りか打算か…敵に塩を送る「大国同士の怪しいディール」
Last week, Trump said he would temporarily lift sanctions on Russian diesel fuel, which provoked criticism from European allies and a bipartisan group of US senators who called it a “gift to our adversary and a betrayal of our allies”.
先週、トランプ氏はロシア産軽油に対する制裁を一時的に解除する(temporarily lift sanctions)と発表した。今月上旬に行われた米露電話首脳会談での合意に基づくものだ。
選挙を目前に控え、トランプ氏がロシア産軽油への制裁を一時的に解除する方針を見せると、米国内の議員や欧州の同盟国からは怒号が飛び交った。
アメリカからすれば燃料高を抑える背に腹は代えられない策であり、ロシアからすれば輸出再開で外貨(戦費)を稼げる願ったり叶ったりの話。双方にとって「ウインウインな取引」に過ぎない。
しかし、ウクライナ支援で汗を流す欧州からすれば、これは明らかな「同盟国への裏切り(a betrayal of our allies)」だ。批判派からは「宿敵へのプレゼント(gift to our adversary)」と吐き捨てられている。
こうした批判をかわしつつ船を確保するために検討されているのが、今回の「闇の白タク船に対する制裁緩和」という変化球だ。ブラックリストの船を正規の業者に売却させ、表舞台で自由に走らせようという特例案である。
|物価上昇率3.7%で崖っぷち、なりふり構っていられない政権
The move comes as data this week showed US consumer inflation jumped to 3.7 per cent in September as a rebound in fuel prices washed over the economy. The White House has raced to counter the surge, leaning on allies to release more diesel on to the market and threatening to impose an export ban.
「闇の船」であろうが何であろうが、とにかく海を走るタンカーの数さえ増やせば、高騰する海上運賃を叩き落として燃料安へ持ち込める——それが政権の狙いだ。
政権がここまで形振り構わないのには理由がある。9月の米消費者物価指数(CPI)の上昇率は3.7%に跳ね上がった。ガソリンスタンドでの燃料高が経済全体に波及(washed over the economy)したのが直撃した形だ。
支持率の急落に冷や汗をかく政権は、同盟国に軽油を出せと圧力をかけるなどパニック状態に近い。その焦りの果てに行き着いたのが、自ら作った制裁ルールを都合よく骨抜きにするという「禁手」だったのだ。
|専門家は冷笑「そんな暴挙、何の意味もない」
Research group Kpler said it expected the measure would have virtually no impact on the current tanker crisis because higher fuel prices are driven primarily by heightened war risk in the Middle East rather than a shortage of vessels alone.
だが、市場のプロたちの反応は「何をバカなことを」と実に冷ややかだ。こんな制裁緩和をやったところで、燃料価格を下げる効果は「ほぼゼロ(virtually no impact)」だと一蹴されている。
そもそも、制裁対象の「闇の船」など老朽化が進んだボロ船ばかりで、前線に復帰させたところで大した輸送力にはならない。
おまけに、今の運賃高騰の本当の原因は「船不足」ではなく、中東の「戦争リスク」にあるからだ。命がけで危険な海域を渡る以上、いくら船の数を増やしたところで、高い保険料や危険手当を払わなければ誰も船を出さない。
つまり政権は、効果すらない対急処置のために、同盟国からの信用をドブに捨てようとしているわけだ。
|選挙さえ勝てばいい? 後回しにされる「見栄え」とツケ
... said by facilitating the purchase of sanctioned tankers in the shadow fleet the administration could potentially remove the “bad look” of issuing new authorisations linked to Russia.
専門家は、制裁対象の船の名義変更を手助けすることで、政権は「ロシアと直接取引を認めた」という政治的な見栄えの悪さ(bad look)をごまかそうとしているのだと分析する。
目の前の選挙に勝つためなら原則すらあっさり曲げ、小手先のパフォーマンスに走る政治。
その場しのぎの政策が残す失策と信用失墜のツケは、結局のところ後から国民や世界経済へ重くのしかかることになる。
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